BOOKS:LIMELIGHT

読んだ本を、感想とともに紹介していきます。

読書レビュー

愚弟・川上宗薫の死に思うことー佐藤愛子著「死ぬための生き方」を読んで

昨日話した佐藤愛子著「死ぬための生き方」の後半レビュー。最後の「こんな死に方もある」という章では、亡くなってしまった何人かの作家について、著者が印象に残っていること、かつての交流の様子が描かれている。 今日はその中から、著者の古くからの友人…

生きるのは死を覚悟してからー佐藤愛子著「死ぬための生き方」感想

佐藤愛子著「死ぬための生き方」を読んだ。和田誠の装丁が決め手で手にとったこの本には、なかなか聞けない大人の本音が入っていたように思う。 物事に対して自分と世の中のものさしで測り、考えを深めて、切る。この人の切り口は毒が強めで、でもこの毒を待…

成熟した趣味の世界ー諏楽を読んで

神保町の呂古書房で手に入れた趣味誌「諏楽(しゅらく)」を読んだ。そこには好きなものを掘り下げた先にある、成熟した趣味の世界が広がっていた。 諏楽通信社が発行していた「諏楽」 収集家たちが集う冊子・諏楽 65年前の、1959年に出た個人(もしくはサー…

孫子に教わる、心を割かない生き方ー岩波文庫「孫子」レビュー

1日1区切りずつにんじんと孫子を読む「1にんじんと1孫子」が終わって、こないだはにんじんの感想を話した。今日は孫子を話していく。 (書いた後に分かったこと…タイトルの「心を割く」は誤用表現です。正しくは「心を砕く」や「時間を割く」となります…

親に愛されない、自分も愛せない哀しみールナアル著「にんじん」レビュー

1日1区切りずつ、にんじんと孫子を読む謎の取り組み「1にんじんと1孫子」が終わった。 books-limelight.com 今日はにんじんの感想を話していくんけど、とにかくヘビーだった…一見穏やかそうな挿絵に目が止まってこうして読んでみたわけだけど、途中何度…

戯曲「サロメ」に魅せられて…次は何を読む?

戯曲の「サロメ」を読んだ。なんて表現すればいいんだこの気持ちは…!とにかく戯曲にハマりそう、というかもうハマったかもしれない。面白かった?興味が湧いた?うーん、なんか違うんだこの感情。なぜこんなに引き込まれたのか。ストーリーを思い出しつつ、…

"忘却"が、知識と思考を回すカギー外山滋比古著「自分の頭で考える」レビュー

思ってばかりから抜け出すために読んだ「自分の頭で考える」レビューの続き。 books-limelight.com 知識を得ること、思考することは両立が難しい。それをうまく回すためには、"忘れる"ことが重要だという。なんとなく、たくさん知識があるほうが思考も深くな…

「思う」と「考える」についての考察。ー外山滋比古著「自分の頭で考える」を読んで

最近また、「思う」量が増えている。 朝起きて「思う」、ご飯を食べて「思う」、誰かと話しながら「思う」。思ってばかりでとても疲れる。本にも集中できなくて、同じ本を読んでばかりだ。これでいいのか?不安になる。 そこで、なにか刺激になればと「思考…

ダンジョン飯おかわり3杯目ー登場人物と自分の性格を照らし合わせてあれこれ考える

ダンジョン飯の感想、話し足りないのでおかわり3杯目。ネタバレあり。 ダンジョン飯 12巻 (HARTA COMIX) 作者:九井 諒子 KADOKAWA Amazon 今日も読み返してたのだけど、登場人物それぞれの個性が、良い点も悪い点もお互いに補い合って、見事に調和していくの…

「ダンジョン飯」というダンジョニウムー久井諒子著・ダンジョン飯 感想

全14巻、読み終わった。「ダンジョン飯」という作者のダンジョニウムを、存分に味わった。 ダンジョン飯 14巻 (HARTA COMIX) 作者:九井 諒子 KADOKAWA Amazon そこに救われた自分がいた。いろいろ話したいんだけど、なぜかいま自分を満たしていることがこれ…

コミカライズした「けっきょく、よはく。」を読む。悩んでたあの頃の自分に読ませたい…!

デザインに興味のある人なら大体の人が知っている本「けっきょく、よはく」がコミカライズしたとSNSでみて、早速買って読んでみた。 初心者のわたしにとっては、漫画のほうが内容が入ってくる感じがあった。 漫画でわかる けっきょく、よはく。デザインは「…

【分かった気になっただけの反省文】一番わかりやすい整理入門を読んで

今日は、実家に帰った時に読んだ「一番わかりやすい整理入門」のメモした部分をもとに、これからの整理・収納方法の検討を行っていく。 整理収納アドバイザー公式テキスト 一番わかりやすい整理入門 第4版 作者:澤 一良 ハウジングエージェンシー Amazon 先…

有馬かなの生き様が、なぜこんなに胸に迫るのかー【推しの子】感想

【推しの子】2期は2024年夏アニメで決まりみたいだー!次は一番好きだった「2.5次元舞台編」だし、それまでにちまちま読み返しては味わっていこう。 わたしは先日アニメ1期見て、その後コミックス13巻まで一気読みして悶えていた。 books-limelight.com ス…

1日「1にんじんと1孫子」 謎な並行読み実施中

1日「1にんじんと1孫子」を始めてしばらく経った。 1日1区切りずつ、両方とも読み進めるというもの。 風呂で本を読むことが日々のお楽しみなんだけど、最近はちょっと趣向を変えて遊んでいる。 今までは20代前半の頃読んだ小説(江國香織、よしもとばな…

【推しの子】一気読みして直下で落ちる

うう〜〜推しの子が面白い!! アニメ1期は見ていて、漫画も読みたいなと思ってたら実家にあった。明日仕事だし、アニメが4巻までの内容だったからひとまずちょっと先まで読んでみるか…と読み始めたら、朝だった。 やー、これは一気読みしちゃうよ!展開も人…

途切れかけの習慣をつなぐ仕組みはー今日の3ステップ

2〜3日に一回更新のこのブログが4日空いた。戻って来れないかと思った。 個人で仕事をしている人がイベントをやるということで、スタッフとしてお手伝いしていたのだった。すごく刺激的で久々の接客も楽しくて、心が満たされた…結果、読まなくても書かなくて…

守備範囲外のマンガにハマるー永野護「ファイブスター物語」の話

家族に同行して永野護デザイン展に行くことになった。 永野護といえば、「ダンバイン」「ガンダム」「ブレンパワード」などのメカニックデザインを手がけ、自身は「フール・フォー・ザ・シティ」「ファイブスター物語(ストーリーズ)」などマンガも描いて映…

悲しみはグラデーション ーよしもとばなな著「ムーンライト・シャドウ」感想。

あまりにも悲しいことが起きて、もう一生立ち直れないと思っても、時が経つにつれまた立てるようになる。それもまた悲しいことだと感じる。 キッチン 作者:吉本ばなな 幻冬舎 Amazon 昨日に引き続き、吉本ばなな著「キッチン」のレビューをしていく。今日話…

あの頃のわたしたちに会えるーよしもとばなな著「キッチン」再読レビュー

よしもとばななの「キッチン」を再読した。読み進めるうち、友人との古い記憶が蘇ってくる。年齢でいうと、21歳とかそのくらい。恐ろしく昔だ…!不思議なことに、以前レビューした著者の別作品「白河夜船」で思い出した友人と同じだった。どうやらこの人の本…

自分専用「ふっかつのじゅもん」ー俺の歯の話(バレリア・ルイセリ著)レビュー

何が起きても、自ら復活できるのがこの男。世界が、他人が、どんな状況で何が起きようとも。この人間は自分で自分に意味を持ち、立ち上がれる。わたしは誰がなんと言おうと、この物語と、この生き様が、好きだ。 俺の歯の話 作者:バレリア・ルイセリ 白水社 …

わたしの話は、長い。「悪文」を読んでテコ入れ中

昨年末あたりからどうもブログの文章が長くなりがちで、平気で3000~4000文字になってしまっていた。中身が充実していればそれでも全然いいと思うのだけど、わたしにその技量は今のところない。 自分のブログの適正文章量は「1500~2000文字」くらいと考えて…

空想ひろがる"架空の仕事人"インタビュー集「じつは、わたくしこういうものです」レビュー

最近は、自分の新たな一面づくりに精を出す日々です。(昨年末にブログ書いてたらそんな気持ちになったんです。)この一面を前に出していきたいから、そうするとこれはやったほうがいいな。逆に今までやってたあれは不要だから、習慣から外そう。とか組み合…

感情が理解を追い越していくー「最高の任務(乗代雄介著)」を読んで

乗代雄介著「最高の任務」を読んだ感情を話していく。 誤字ではない。今日書くのは「感想」に満たない「感情」となる。 終盤にかけて涙が止まらなくなり、嗚咽しながらなんとか読み終えた。帰ってきた家族のどん引きした顔。時間をおいて読み直しても変わら…

前に進みたいがために書き出す、進めないことを確認する作業-生き方の問題(乗代雄介著)感想

乗代雄介著「最高の任務」を読み終えた。2つの中編からなる本で、今日は1つ目の「生き方の問題」について話をしていく。 最高の任務 (講談社文庫) 作者:乗代雄介 講談社 Amazon 過去には「十七八より」、「本物の読書家」を読み、それぞれにうまく言葉にで…

言葉を選び、考え、積み上げる。自らを建築する主人公ー東京都同情塔(九段理江著)レビュー

九段理江著「東京都同情塔」を読んだ。言わずと知れた第170回芥川賞受賞作、やっぱり気になって手に取った。 自分を建築するために、言葉を選び、考え、積み上げる。主人公のストイックなあがきと苦しみに魅せられた。少し先の未来の悩みは、こんな感じかも…

2024年に取り組む難解本『IMONを創る』再レビュー(いがらしみきお著「IMONを創る」感想)

前回よく分からずじまいだった「IMONを創る」を通読したら全体観がつかめた気がするので、再レビューします。 わたしときたら年が明けてからIMON、IMON…とうわ言のように繰り返し話すので、家族からうるさい!とIMON禁止令が出てしまいました。なのでここで…

ビジュアリストの読書観。「言葉を離れる(横尾忠則著)」レビュー

えらい時間のかかった読書でした。1ヶ月くらい一緒に過ごしてたかも。多少ムキになって読んでいた感はあります。 言葉を信用しない、ビジュアリストの読書観。文章に埋もれることが幸せなわたしにとっては、物事の捉え方の違いをこれでもかと味わえた本でし…

ファミレスは人間交差点:和山やま「ファミレス行こ。上巻」レビュー

前回のカラオケ行こ!に続いて、続編の「ファミレス行こ。上」も読んだので感想を話していきます。 ファミレス行こ。 上 (ビームコミックス) 作者:和山 やま KADOKAWA Amazon 東京の大学に進学した聡実(さとみ)くんは、ファミレスでバイトをはじめました。…

ヤクザと中学生のカラオケ特訓物語―和山やま「カラオケ行こ!」マンガレビュー

この人のマンガは見かけると即買いしてしまう 和山やまのマンガ「ファミレスいこ。」を買ったので、まずは前作の「カラオケ行こ!」を再読しました。 カラオケ行こ! (ビームコミックス) 作者:和山 やま KADOKAWA Amazon カラオケ行こ!は、中学生で合唱部部…

世にも恐ろしい「ノミ」にまつわる小説。江國香織「ぬるい眠り」短編集より

はっきりとわかったことがある。世界は大きく二分できるのだ。ノミにさされた人間の世界と、ノミにさされていない人間の世界と。 江國香織著「ぬるい眠り」より引用 世にも恐ろしい「ノミ」にまつわる小説を読んだ。 短編集「ぬるい眠り」は、著者の江國香織…