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読んだ本を、感想とともに紹介していきます。

孫子に教わる、心を割かない生き方ー岩波文庫「孫子」レビュー

1日1区切りずつにんじんと孫子を読む「1にんじんと1孫子」が終わって、こないだはにんじんの感想を話した。今日は孫子を話していく。

(書いた後に分かったこと…タイトルの「心を割く」は誤用表現です。正しくは「心を砕く」や「時間を割く」となります。しかし、記事の趣旨として、自分的にはやはり「心を割く」を使いたく、このまま書き残します。比喩表現ととらえて頂ければ幸いです。ニホンゴムズカシイ!)

いわずと知れた有名な兵書。知りたいことしか学んでこなかったので、この分野はミリしらに近い。

現代として解釈した時に無理があるように感じて、さらっと読み進めた部分もあるにはある。それにしたって、しっくりくるんだよなあ。もともと血の気が多いところがあるわたしは、孫子の考え方や物の捉え方が思いのほか腑に落ちた。

もっと深く知りたいから、易しい本からはじめたり、詳しい人の話を聞いたりする必要がありそうだ。今回は、一読した段階で分かった「いかに戦わないか」「場を測る」ことの大切さについて深堀りしていく。

戦わない=心を割かないと捉えた

まずはじめに、いかに戦わないかについて。

「戦わずして人の兵を屈するは善の善なる者なり(P45)」

孫子(岩波文庫)より引用

戦うと、それだけ人が死に、食料や武器が減る。つまりは国力が落ちる。なので、戦おうとしないで、味方につけちゃう方法を一番に考える。この技を持ち合わせている人は強い。

今の職場には好戦的な人がちらほらいて、ケンカを売られるとすぐ買ってしまう自分に驚いている。要するに、同類だったのだ。これまでは割と穏やかな職場が多かったので、思いのほか生き生きと戦っちゃう自分に気が付かなった。

でも、戦うとものすっっごく疲れる。家に帰っても思い出してはあれを言ってよかったのか…なぜあんなことになったのか…ぐるぐるしてしまうこともある。

孫子を読むと、それがいかに自分を疲弊させてきたかがわかる。国力=自分の体力、精神力なのだ。戦わずに受け流して、本当に大事なものに目を向けることが必要なんだ。

戦うということを今風に解釈すると、「心を割く」だと思う。口論に応じるのも、他を慮るのも心を割くということなんじゃないかな。割く必要のない心は温存!その分大切なことに使おう。

それを考えると、上司は相当強い。この環境で何十年とやってきたからだろうか、あしらい方、いなし方が身についている。まともにやり合わないで、わたしはライフワークとなりつつある「自分の書きたいものをまとめる作業」にいそしみたい。

場を"測る"ことの重要性

次に、場を"測る"ことについてまとめていく。

「敵情を知って身方の事情も知っておれば、そこで勝利にゆるぎが無く、土地のことを知って自然界のめぐりのことも知っておれば、そこでいつでも勝てる。(P141)」

孫子(岩波文庫)より引用

敵、身方、戦う土地のことをよく分かった上で行動を起こすから、うまくいく。

空気を読むのとは、ちょっと違うと思う。自分の位置、相手の状況、味方の状況をよく調べる。目的に応じて計測、数値化して理論的に答えを出して行くような印象を受けた。

感覚派は、自分のものさしでしか測れない。これでは空気を読むのと同じで、ものを本質的に捉えることはできないと思う。状況を客観的に正確に測る。今の状況を俯瞰して数値化する。言語化でもいいかもしれない。わたしはそんな風に捉えた。

…でもこれ、実際には全然できそうにない。どこまでも自分目線でしか語れないのが切ないところだな…課題ということで。

孫子を知れば世界は広くなるだろう

わたしは昔から視野が狭い。熱中しやすいのは長所かも知れないけど、周りが見えないのは大きな短所だ。

頑固で融通が効かないので、自分が信じた道をひた走る。道中でケンカを売られたら普通に買う。それがいけないこと?と付け焼き刃の正義を振りかざしがちなわたしには、孫子は必要な本だった。

別に深く勉強をしていなくたって。こういうことを知ってるのと知らないのとでは、ふとした時の考えや行動が変わってくるだろう。孫子を知れば、少なくとも視野が広がり、やがては世界も広くなると思う。

まずは、心を割くべきところを考えて割こう。つまらない衝突はスルーして、やりたいこと、大切にしたいことに心を割いていきたい。

これが教養ってことかぁ〜。脱力した。こうなったら呉子、孔子、老子も読まねばなるまい。

しかしまあ…マンガでわかる!とか、浅いところから攻めていくのも全然ありだな。わたしは今回の岩波の本でも十分面白かったけど、取りこぼしている内容がたくさんある。入門編の方ならそういうものがなく知識を得られるだろう。次はそうしてみようかな。

これを体得できるほどの人生のスケールはないけれども、知っている人にはなれる。やってみる価値はある。

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