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読んだ本を、感想とともに紹介していきます。

"忘却"が、知識と思考を回すカギー外山滋比古著「自分の頭で考える」レビュー

思ってばかりから抜け出すために読んだ「自分の頭で考える」レビューの続き。

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知識を得ること、思考することは両立が難しい。それをうまく回すためには、"忘れる"ことが重要だという。なんとなく、たくさん知識があるほうが思考も深くなる気がしていた。矛盾する理論に感じたけど、最終的に納得した。

結論からいうと、日々意識的に「忘れる時間をつくる」ことで、脳みそに空きスペースができる。それが思考する時の助けになるよということ。

今日はこの忘れる理論を、自分が使えるところまで落とし込む作業をしていく。

知識と思考は仲が悪い?

なぜ知識と思考は両立が難しいのか?

知識を得ることの大切さは、義務教育で繰り返し教わってきた。できるだけたくさんのことを覚えるように、忘れないように。叩き込まれてきた。しかし、知識を得るにつれて感受性を失ってしまうのではないか。

記憶力にすぐれ、知識が豊富な人はとかく思考力が乏しいことが多い。逆に、思考力があっておもしろい考え方をする人はしばしば知識に欠けるところがあります。
外山滋比古著「自分の頭で考える」より引用

読書に限った話でいえば、ショーペンハウアーの「読書について」にもあるように、読むこととは他人の頭で考えることなので、それでは自分の糧にはできない。やはり自分の頭で考えを巡らせることに意味がある。

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選択的忘却のすばらしさー忘却は個性

著者は、"忘却はすばらしいこと"だという。

記憶することは長らく人間の重要な能力として扱われてきた。しかし時代は変わり、パソコンが人間より迅速・正確に記憶できるようになった。パソコンなら壊れない限り、永遠に記憶し続ける。反対に人間はどう頑張っても、いままで取り入れたことをすべて覚えるなんてできっこない。

しかし、この"忘れる"ことは、能力と捉えることもできる。同じことを経験して学習しても、人によって記憶に残る部分が違う。虫食いのような記憶のかたち、これはパソコンにはできないことだ。

忘却は個性。何もしてなくても、無意識下で「選択」して忘れていく。これが個性の獲得になる。そして同時に、脳みその空きスペースとなる。

読んだものを忘れないようにとわたしはこうして書いているわけだけど、他のレビューを見ると視点が違くて、同じものを読んでもこんなに違うか!といつも楽しい気持ちになる。一方で覚えていない部分を知ると、都合よく忘れているようで悲しくなったりしていた。でも、無意識下で必要じゃないと思っていたことになるのか。これは個性なのか。この考え方はだいぶ面白かった。

逆に言えば、どうしても覚えたいとき、無意識に忘れてしまうのならその方法はダメなんだなということになる。他に記憶できそうなやり方(声に出す、手で書く、人に話すなど)を試そうと自然に思える。

脳の空きスペースをつくる"ちょっと休憩"

知識を得ることと自分の頭で考えることの大切さはわかった。忘れるメリットも知った。では、バランスよく回していくために、どうすれば良いか?

それは、忘れる時間をつくること。こまめに、積極的に休んで、記憶の掃除をする。ここでは、学校の10分休憩/会議のコーヒーブレイク/職人の一服をあげている。また、睡眠についてもすごく大事なこととして話している。

ちゃんと勉強したことはないけど、25分ごとに休憩をはさんで効率化を図るポモドーロテクニックとかはこれにあたるのかもしれない。

覚えて、忘れて、考える。日常にこのサイクルを

思考をめぐらせてばかり、知識を蓄えてばかりじゃ、脳内メタボになって身体に悪い。うまい具合にサイクルの仕組みをつくって、回していくことが重要。その為には積極的に忘れる時間を確保して、脳の空きスペースをつくるのがいい。

忘れるのは人間の特徴だから、意識する必要はなくて。ただ休憩したり、ちょっと眠ったり、そういうことで十分。あとは思う存分考えて、思う存分知識を得る体験をしていけばいい。

モヤモヤとしていた部分が少し晴れた。あとは自分でやって微調整。ちょっと休んだら、また考えよう。

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本ではこのあと、著者の日々の過ごし方が載っていた。起きる時間、運動、食事、どれも個性的だった!たくさん微調整を重ねた先にある、この独自のスタイル。わたしの求める先は、こういう人間ということになる。