BOOKS:LIMELIGHT

読んだ本を、感想とともに紹介していきます。

「うまくつくれない」いまの自分に効いた本ー「編集デザインの発想法」を読んで

春から知り合いの店のフリーペーパーを作らせてもらっている。
テンプレ7割、自力3割という感じなんだけど、つくるたび「無力…力不足だーーーっっ」と心の叫びがとまらない。

デザイン本とか読んでわかった気になって、結局全然わかってないじゃん。そんなことに気がついてもだえている。

知り合いは喜んでくれて、報酬までいただける。家族に相談すると「そうやってくよくよするけど、いつも別に大丈夫じゃん。そのままやってけ」とまさかの100%応援だ。

でもね、できてないんですよ。つくった人が言ってんだから間違いない。
割り切れないこのモヤモヤを…抱えつつも次の締め切りは迫る。

今日はそんないまの自分に効いた本「編集デザインの発想法 動的レイアウトのコツとツボ570」を紹介していく。

ざっくりとこんな本

本のタイトルにある「動的レイアウト」とは、ページをめくることを想定した文字や写真の組み合わせのこと。本では主に、雑誌を想定しながら説明が進んでいく。

そして「発想法」なので、あくまでラフのようなイメージ共有だけなのがいいところ。デザイン例があると引っ張られちゃうことも多いけど、考える余地が残されている感じがする。

ユーモアが宿ったデザイン本

この本が他のデザイン勉強本と違うのは、ユーモアがいい感じに効いていて、肩に力が入ってないところだ。

まず、挿絵が先日レビューしたユーモアスケッチみたいな感じなのがいい。

海外の絵のタッチだ。加えて説明には皮肉が効いている。
「〇であるということは、▲でないということ」みたいな逆説?的な言い方も多くて、ちょっと斜に構えた見方なのが面白い。

デザイン勉強本は良い例と悪い例、それぞれの説明が羅列してあるものが多いイメージだけど、それは真面目過ぎたのではないかと思った。わたしにはこのくらい外して話してくれるのがすごく分かりやすかったし、想像力がふくらんだ。

原動力になった言葉

巻末には【16の悩み】として、デザイナー視点、編集者視点のQ &Aが並ぶ。それに対して箇条書きで書いてあるアンサーが本当にありがたかった。

わたしは今回のフリーペーパーをつくるのがこわくて(また微妙なものを錬成してしまったらどうしよう)、でもこの言葉で踏み出せたので紹介したい。

Q.編集者です。「デザイン」におびえています。どうしたらよいでしょう?

A.誰もあなたが何をするつもりだったか知らないので、どれくらいひどい失敗をしたかわかりません。自分を許すことを学んでください。次の仕事が待っています。
ヤン・V・ホワイト「編集デザインの発想法 動的レイアウト570」より引用(P.239)

この言葉を読んだとき、思わず吹き出してしまった。じんわり涙がこみあげてくる。そうかあ、そうかも。いつも自分を蔑んで、罰してばかりだなあ。どんな自分もまるごと引き連れて、次に行こう。素直にそう思えた。

これは答えの一部で、実際はこの問いに対する答えがあと8つもある。この答えたちのムードが、頑なになっていた自分の考え方をほぐしていく。そうかあ、こういう言い方が今の自分に響くんだ。状況や環境にあった本選びの大切さを知った。

今回参考にした発想法

わたしが作っているフリーペーパーは、もともと店主が担当していたので、1から作ってるわけではない。でもテンプレから一歩踏み出して素敵にしたい欲がある。
色々やるものの…「前のほうが良かったんじゃね?」←イマココ
はー、この事実を受け入れるのが一番しんどい。

今回本を読んで手を加えた部分は「目次」と「カラー」。それぞれやったことと、次回までの宿題を記しておく。

「目次」

目次はいままで2ページ目にあったのだが、今回3ページ目に変更した。

作っているフリーペーパーは8ページ構成で、雑誌と同じ左開き。開いたときに次に見えるところは3ページ目だ。そこにガイドページを入れる。

よく考えてみればそうだ。今までそうだったからという理由で見逃していた…何で気が付かなかったんだろう。この本はそんなことであふれている。

(次回までにやること)

本にあった「雑誌の目次だけ、50個あつめる」というのをやりたい。出版物の個性と必要性を反映するために、比較して分析する。
うまくつくれないのは、よく知らないからだ。パーツごとに分析するのは効果的なように感じる。

「カラー」
  • 自分の好みで色を選ばない
  • 色は心理的な常識で選ぶ
  • 最初に背景色を選び、アクセントを決める

いかに自分がなんとなくで選んでいたかを知る。多分今回も好みからは抜け出せてないんだけど、今回のテーマ「子供向け・工作系」に沿うように、寒色系から暖色系に色を変えた。

アクセントカラーはまだよく分からないので、ひたすら色んなものを試して「明度と彩度が同じ類似色」にした。

(次回までにやること)

色で最も価値あることは、黒ではないということです。読者の目を重要な点にうまく導くことができるのです。それを無駄にしてはいけません。十分に明るく、大きく目立つように、珍しい場合にだけ、色を使うべきです。少ないほど効果的です。
ヤン・V・ホワイト「編集デザインの発想法 動的レイアウト570」より引用(P.214)

この文章を頭に叩きこみながら、自分が好きな色合わせのコレクションをする。フリーペーパーとかチラシのストックは結構あるので、それを見ながら進める。

あとはPC上で良いなと思った色でも、印刷されると結構印象が違う。試せるだけ試して、引き出しを増やそう。

デザイン本は、つくるために、読む。読んだら、つくる!

「編集デザインの発想法 動的レイアウトのコツとツボ570」は、めくることを想定したレイアウトの発想を570個も紹介している本だ。今回、発想法をもとに展開したことは5個くらいだろうか。

フリーペーパーを定期的につくりはじめたことで、いままでわたしはいかに生きた読書をしてこなかったのかということがわかった。

豆知識が増えていくばかりで全然身についていないのは、ひとえにわたしが実際にやっていなかったからだ。

つくるとそのダサさにもだえ、依頼者に申し訳なくなり、その度いろんな情報をかき集めてまたつくる。ポイントは「つくるために読むんだ」ということ。ただ読むことは、もうしない。読んだら、つくる。つくるんだ。

そんなこんなで、今回のフリーペーパーも完成した。また悩ましいものを錬成してしまい、申し訳ない。しかし、そんな自分を許して、この本とともに前に進もう。次の仕事が待っている。