BOOKS:LIMELIGHT

読んだ本を、感想とともに紹介していきます。

女同士の距離感(山本文緒著、絶対泣かない読書レビュー)

女同士の友情は割と薄情である。と思う。

それは、女にとって自分の役割…というか立ち回りが変わる瞬間は割とたくさんあって、その都度共感してくれる人を探すから。あまりに生き方が変わってしまうと、自然とあっさり会わなくなってしまうものだ。

今日話す「花のような人」という話は、仕事面においての、そういう女の微妙な関係性の変化を味わえる。

主人公はOLで、この会社で定年まで働こうと心に決めている。同期が何人もいたけれど、結婚だったり、「やりがいのある仕事」を見つけて会社を去っていく。仲が良かった同期の一人「薔子」もある日、フラワーデザイナーになると言って会社を辞めた。お花が好きなんて一言も聞いたことがない。それがショックだった。

やりがいのある仕事ってなんだ。あまりに安易じゃないか?OLはつまらなくて、一風変わった仕事ならやりがいがあるのか?

もう、彼女に会うことはないな…と思う主人公を見て、わたしは自分の生き方を持っていて潔いと思った。自分が推し通したい信念があり、その信念にそぐわないことをしている人をそばに置かない姿にかっこよさすら感じた。

あれから数年が経ち、2度目の再会時のこと。

彼女の顔の輝きは、去年にはないものだった。彼女がぐんと大きく見えた。苦しい時期を乗り越えたのかもしれない。

山本文緒著「絶対泣かない(角川文庫)」より引用

彼女は変わっていた。仕事に信念を持ち、喜びに溢れた彼女の表情を見て、主人公は旧友を温めようと声をかける。わたしは、楽しいだけを共有したり、辛い時慰め合う関係もいいと思うけど、こんな風に一本筋の通った距離感のある間柄にとても憧れる。戦友みたいなものだろうか。

仕事をする、ということは、遊びとは違うのだ。厳しくて当たり前なのかもしれない。自信をなくし、そしてまた違う形の自信を取り戻す。そうして進んでいくものなのかもしれない。

山本文緒著「絶対泣かない(角川文庫)」より引用

女同士の距離感はこのくらいドライだからこそ、今一緒にいる友人と対等に刺激しあっていきたいと願う。べったりくっつくのではなく、傷を舐め合うのではなく。

ーー働く女性の短編小説「絶対泣かない」のレビューウィークも今日で終わりです。あー、堪能した。わたしが紹介した8人以外にも、営業部員、主婦、エステティシャンなどまだまだあります。仕事で悩む人はもちろん、これから社会に出る学生さんにもきっと参考になる本だと思います。読む人で受け取り方はだいぶ違うかな?と思うので、わたしはこれから感想ブログを見て回ってみます。また新たな発見があったらブログにあげるかも…好きな作品は、何回レビューしたっていいですもんね!長らくお読みいただき、ありがとうございました。

≪絶対泣かない・レビューリスト≫

  1. 秘書:絶対泣かない
  2. 派遣社員働く”領分”を考える
  3. 水泳インストラクター:人生の泳ぎ方を教わる
  4. デパート店員:人は見ている。誠実さは伝わる
  5. 地方テレビ局員:気持ちは測れない、それでも
  6. 教師:先生だって人間だ。生徒も一人の人間だ。
  7. 漫画家:親子の関係が変わる瞬間