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読んだ本を、感想とともに紹介していきます。

親子の関係が変わる瞬間(山本文緒著、絶対泣かない)読書レビュー

親はいつまで経っても子供の世話を焼くものだし、子供は子供で親を頼るものだ…って思いますか?わたしはそうは思いません。

いや、時としてそういうことがあっても良いとは思うけども。その姿は絆のように感じて微笑ましいかもしれないけれども。親離れ、子離れして、独立した個人として互いに向き合うタイミングが欲しいなと思います。

今日は働く女性の短編集「絶対泣かない」の中でも、親子の関係が変わる瞬間を描いた「愛でしょ、愛」という話をレビューしていきます。

  1. 秘書:絶対泣かない
  2. 派遣社員働く”領分”を考える
  3. 水泳インストラクター:人生の泳ぎ方を教わる
  4. デパート店員:人は見ている。誠実さは伝わる
  5. 地方テレビ局員:気持ちは測れない、それでも
  6. 教師:先生だって人間だ。生徒も一人の人間だ。

7人目になりましたね。今回は漫画家の娘をもつ、お母さんの話。初めて働く本人ではなく、周りの人を切り取った話です。

上京してそのまま就職したはずの娘が漫画家になっていたことを人づてに知り、その漫画の内容(成人系)にさらに驚く。いても経ってもいられず娘を訪ねる…という話なのですが、アシスタントを雇いながら働く娘の姿をみて、お母さんはこう思います。

私はあの子のことを、褒めてあげたことがあっただろうか。慰めはしても、褒めてあげたことがあっただろうか。

山本文緒著「絶対泣かない(角川文庫)」より引用

庇護の対象だと思っていた娘は、内容はどうあれ、立派に働く大人になっていた。親に黙っていたのは褒められたものじゃないけど、それは褒めもせず頭ごなしに否定して、勝手な心配をする親の姿が想像できたからだろう。

そこからのお母さんの行動が素敵でした。いかがわしいと拒絶していた娘の作品を読んでみようと試みます。娘はその声かけに驚きつつも、たくさんある著作を運んでくる。この瞬間に「親」と「子」の役割を超えて、独立した個人としてお互いを見たと思います。

お互いに何を考え、どんなことに興味があるか。守り守られる親子の関係から、一人の人間同士としての関係へ。大人になったら、こんな風に向き合ってお互いを知っていきたいと強く思います。

今週末はわたしも自分の親に会うので、親は今どんなことが好きなのか?日常でどんな風に過ごしているのか?いろいろ聞いて、話してこようと思います。楽しみです。