働くと一口に言っても、業種はもちろん雇用形態もたくさんあって、そしてそれぞれの領分もある。アルバイトはアルバイトらしく。派遣は派遣らしく。その超えてはいけない”領分”ってなんだろう…とこの短編集の1話「アフターファイブ」を読んで考えこんでしまいました。
今週は個人的に「絶対泣かない(山本文緒著)」を深く味わう週です!昨日は秘書でした。今日は派遣社員の女性を紹介しながら感じたことをお話しします。
前職が多忙だったために体を壊し、現在は派遣社員として働く主人公は、平日9時から5時まで老舗出版社に勤めています。
業務内容は「ファイリング」。だけどそれに留まらず、来客応対、文書作成、外部からの問い合わせなど、それぞれ上手くこなして穏やかな日々を送っています。
そんななか、ある日自分の仕事ぶりにケチをつける人が現れました。内容は「働きすぎ」。働かなくて怒られるならまだしも、働きすぎとはどういうことか?!と主人公は戸惑います(わたしも戸惑った)。
仕事ができない正社員からクレームが来ているらしい、その事実に悶々としながらも仕事をしていると、その社員と衝突してしまいます。言い合いをしている時に仲裁に入った人の言葉に、身につまされるものがありました。
「君は安全な所にいて、おいしいところだけ持っていってるんだよ」
山本文緒著「絶対泣かない(角川文庫)」より引用
うーーーん。責任を取るのは確かに正社員なのかもしれない。主人公は派遣社員の領分を超えてしまっていた、ということなんだ。。続く言葉がまたしんどい。
「君の気持ちも分かるけど、私は何も悪くないって顔するのはよくないと思うな」
山本文緒著「絶対泣かない(角川文庫)」より引用
これはわたし、言われたことがある。そして、まだすっきりと消化できていない指摘……。
わたしは転職回数が多いので、大体の雇用形態は体験してきました。だけど、その都度ちょうどいい働き方に悩んでいたような気がします。そういえば千と千尋の神隠しでかまじいが「他人の仕事をとっちゃなんねえ!」的なこと言ってたな。そういうことなのかな。
でもこの話を読むと、ケチつけてきた人に「そういうあなたは、そもそもちゃんとやろうとしてないじゃん。」って言いたくなっちゃうな。
非正規社員という立場のせいで、会社に深く関れず、本気で意見をぶつけ合うこともできない。もどかしい思いを抱えた主人公の最後に取る行動を、そっと後押ししたい気持ちになりました。
↓秘書について話した記事はこちら