BOOKS:LIMELIGHT

読んだ本を、感想とともに紹介していきます。

絶対泣かない(山本文緒著、角川文庫)読書レビュー

気の強い女は嫌いでした。ツンツンしちゃってさ、何がいいんだろう。女の人はしなやかで、いつも微笑んでいる女神様のようであるべき、とさえ思っていました。(女は女は、っていうのはもう時代遅れですが、まぁ昔の価値観の話なのでご容赦ください)

今日の本「絶対泣かない」は、さまざまな仕事に就く15人の女性が主人公の短編集です。花屋、教師、スポーツインストラクターなど、それぞれの泣きたくなるような途方に暮れる瞬間を切り取り、そこに何を見出して強く生きていくのかを覗かせてくれます。

絶対泣かない (角川文庫)

(以下、今日ちょっとネタバレしてる気がするので、気になる方は本を読み終わってからどうぞです!)

題名にもなっている「絶対泣かない」は13人目で、秘書として勤める女性の話です。

長い転職活動を経てやっと就いた秘書の職業。入ってまだ10日だけど、毎日毎日同い年くらいの女社長に「こんなことも出来ないわけ?!」と嫌味を言われながら仕事をしています。この時点で泣きそうだけど、しかし、この話で本当に泣きたくなるような心境なのは女社長の側なんです。

実はこの2人、ずっと昔の知り合いで、その時は立場が逆でした。幼い頃の仕返しも相まって、採用されたのでした。美しくてお金持ちの女社長は、昔は真逆の人間で。でも今は人を雇うほどに事業を成功させています。それでも、ままならないことはある。

「どうしたら強くなれるのか、教えてほしかったのかもしれない」

山本文緒著「絶対泣かない(角川文庫)」より引用

主人公になぜ雇ったのか聞かれて答えたこの言葉、きっと押し殺すような…涙を堪えるような声だったに違いない。必死で努力して、一般的には成功を得ている状態でのこの言葉は、かなり胸にくるものがありました。

気が強い人は、もともとそういう人もいるだろうけど、自分を奮い立たせるために武装している人も多いのではないか。それならむしろ、わたしは応援したいし、その人を知る努力がしたい。がむしゃらでひたむきなその姿勢を学びたい。そんなことを感じた話でした。もともとそういう人は…多分気が合わないので、見極めを大切にしようかな。

今回ちょっと描写多めでネタバレっぽい感じかもですが、ご安心を!著者の文章や描写を読むことで、本当のニュアンスがくっきりと伝わります。本を読んだ場合には、もっともっと鮮明な解像度で感じることができます。

わたしは著者の山本文緒さんの文章が本当に好きでして…今週仕事が忙しめなので、この「絶対泣かない」を読み直しながら自分を奮い立たせ、頑張ったご褒美に思いっきりレビューしまくろうという算段です。そして強く生きるんだ。わたしも!