BOOKS:LIMELIGHT

読んだ本を、感想とともに紹介していきます。

違国日記が終わってしまった 、寂しい。

気まぐれに買い集めていた違国日記。友人と本屋に行った時、好きなマンガがあってね~、と話していたら「これのこと?最終巻って書いてあるよ~」

へ?!……さみしいなあ。終わっちゃったのか。あの空気感はもう味わえないのかあ。そのまま買ってない分と最終11巻、大人買いして帰ってきました。

違国日記はこんな話

この作品のテーマは重たい。でも日常の描写は軽やかです。

両親を事故で亡くした中学3年生の女の子/朝(あさ)と、その子を引き取った35歳の叔母(母親の妹)/槙生(まきお)の共同生活の話。槙生の家に住むことになった経緯からはじまり、共同生活するなかで互いに考えていることや、心境の変化に焦点を当てて物語が進行していきます。

惹きこまれたところ

槙生は内向的で他者との接点をあまり取りたがりませんが、幼い頃から確固たる自分の世界があります。一方の朝は、優柔不断で焦りがちですが、社交性があって(ガツガツしてる感じではなく、自然とコミュニケーションが取れる感じ)いろんな人の意見を取り入れられる子です。

この真逆ともいえる二人が、生活の中でお互いに影響しあっていくところに惹きこまれました。

まだ柔らかくて、自分の言葉でどうにでも変化してしまいそうな小さな生き物。埋められないほどの喪失感を抱きながらも、どうにもならない砂漠の心はどうやったら癒されるのだろう。槙生は小説家を生業としているだけあって、物事を注意深く、独自の目線でみています。朝を見る時にどうしても、朝の母(槙生の姉)とのかつての確執がちらつき、余計に慎重になってしまう部分もあります。

朝は朝で、両親を失ったあとも中学卒業、高校入学、変わらず学校に通う。素直な心を持ったこの子は、失ったものや等身大の悩みとも正面から向き合っていきます。

親子ではないからこそ、お互いの距離を測りながら生活していきます。

登場人物たちの距離感に憧れる

この物語はわたしにとって、人々の距離感がちょうどよい。介入しすぎず、でもいつもどこかで想っています。終盤でこの距離感をものすごくぴったりな表現であらわしていて、思いがけず涙がこみあげてきました。

淡々としているようで、互いに見守りあうような自立した人間関係にとても憧れます。槙生は人が苦手って言っているけど、こんなに豊かな関係を築けている。あっさりしているようで、どこか思いやりがあるんですよね。

槙生は自分に嘘をつかないので、朝に対しても子ども扱いせず、一人の人間として扱います。時にそれが朝を突き放してしまい傷つけてしまうとしても、曲げられなくて苦悩するところも込みでわたしは好きです。自分に誠実だからこそ、人にも誠実になれるのだと思います。

もっと、この空気感に触れていたかった

正直もっとこの日常を一緒に見ていきたかったな~と思います。でも朝にとっても槙生にとってもいい区切りだったので納得です。たった一言が言えなくて、回り道してしまう経験はわたしにもあるなあ。でもその回りくどさが人間臭くて好きだな。

スピンオフとかあったらいいな

二人を取り巻く人たちも楽しくて、単話のスピンオフとかあったらすごくいいなと思います。わたしが見たいのはこの人たちです。

  • 槙生の親友・奈々
    この人の言う"エポック”が、物語のキーポイントにもなっていてずっと心に残っています。仕事の様子とか、家族との確執と向き合いながらも槙生たちと日常を楽しむ様子を見てみたい。あと、おしゃれだから日々の服装がもっと見たい!
  • 弁護士の塔野さん
    この人の"出来すぎて人の心が分からない”ところがすっごく好きです。槙生や朝と接することでどんどん人間味が増して、世界が広がっていくところがみたい!
  • 槙生の元彼・笠町くん
    やっぱり、過去編…?いや、わたしは笠町くんが何気なく槙生を気にかけて誘ったり、美味しいものを運んできてみんなで食卓を囲んだり、ちょっと嫉妬したり、そんな様子をずっと見ていたい。笠町くんの今をずっと追っていたいです。本当に切なくて素敵な大人だ。

こうやって見てみると、槙生の周りの人ばっかりだー。槙生とその周辺の大人たちが大好きだということがよくわかりました。

"大切に思う”ってなんだろう。

血が繋がっていてもいなくても、人はそれぞれ独自の世界を持つ全く別の生き物です。違国日記では「あなたとわたしは違う」という大前提のもとで、大切な人をどう大切にするか?そのひとつの形がみられる作品だと思います。

この作品の登場人物はみんな、お互いに干渉しすぎず、思いやるけど子供扱いはしない。なんというか知的な空気が流れています。子供にとってはちょっとドライに感じるかもしれないけど、大人になるにつれ滲む優しさに気づいていくと思います。

こういう雰囲気のマンガってあんまり知らなくて、なので替えがきかなくて困っています。何度でも読み返せばいいんだけど…なんとなく、短い間だったけど一緒に過ごしているような感覚があったので。みんな前を向いて、行ってしまったな、と寂しい気持ちです。

映画化…は今のところあんまり興味ないかな。アマプラとかに上がったら見るかな?くらい。マンガがとにかく好きです。好きでした。