ここは図書館か?と錯覚するくらいの、いつもどおりのシンとした社内。
思いっきり、机を殴りつけてみてもいいかしら?
あそこのゴミ箱、助走をつけて蹴り飛ばしてもいいかしら?
そんなことがたまに起こります。
そして、そんな時に気前よく半休をくれるのが、私の上司の素晴らしいところです。
映画『ひゃくえむ。』を観に行きました。

ひゃくえむ→100M→100m走に生きる人間たちの物語です。
生まれつき、足が速いもの。
走ることで、気を紛らわすもの。
それぞれに動機は違えど、走り続ける。
意味を見出したり、手放したりして、また走り続ける。
まっさらな気持ちも、渦巻く気持ちも、この10秒に凝縮される。
好きなことって、同じだったはずが形が変わっていくものだ。
できることって、やろうとした瞬間にできなくなっていくものだ。
分かったり分かんなくなったりを繰り返していく登場人物たちを前に、下唇を噛む。
クライマックス、コンマ1秒、
「うわ〜〜〜ん」のモーションで涙している自分がいた。
肩を振るわせながらの「うわ〜〜〜ん」。マスクしててよかった。
エンディングが終わり、急に明るくなった劇場で、鼻をスンスンさせながら足早に去っていく同志たちよ。私たちが感じたこの胸の熱さはなんだと思う?
私は、「あの一瞬」を渇望しているんだと思うんだよ。生まれつき、欲望の一つとして持っているものなんだと思うんだよ。誰もがってわけじゃない、でも確実にいる。
そして「あの一瞬」の対象も、どうも生まれながらとか幼少期に決まっているもののような気がしてならない。
対象を忘れて生きているものがここに一人。何者かになりたいわけじゃないのに、「あの一瞬」は渇望してる。笑っちゃうよなあ。
…というようなことを、とぎれとぎれに帰りの電車で考え、べしょべしょの顔で歯医者に行って現実に帰ってきました。
ひゃくえむ。原作が読みたいと2件本屋をはしごするも…ない!せめて映画館の下にある本屋には常設していてほしいものだな……と悪態をつきそうになりつつ、また探しに行ってきます。
ひっどい気分になるような出来事も、自分の方向性さえ定まっていればぐらつくこともなかろうよ。それでも、もっとレベルの高いところでぐらつくことになるんだろうけど。
そこに見出すそれぞれの美学に恐れ入った。生き方ってこういうことでありたい。

