今日は小林賢太郎戯曲集(椿 鯨 雀)の話をしていく。この本はラーメンズ(小林賢太郎・片桐仁)が2001〜2002年にかけて劇場で上演した作品台本を文章化したもの。お笑いの人、コントの人、演劇の人、どれとも言えない独自の世界を表現している人たちだよなあと思う。
昔ラーメンズの動画を狂ったように見ていた時期があった。今ではほとんど覚えてないけど、古本屋で偶然見かけてこの本を手に取ったのだった。
これを書くにあたって、動画もまた見てみようかと思ったらYouTubeに全部上がっていた。文章で読む→動画を見る→文章に目をやりながら動画を聞く、全部やったら大変面白かった(暇だなー自分)。
当たり前かもしれないけど、文章で読むのと動画を見るのとでは、広がるイメージが全然違う!それぞれで印象に残った作品を今日は書いていこうと思う。
椿
ラーメンズ第八回公演「椿」は9作品。
- 時間電話
- 心理テスト
- ドラマチックカウント
- インタビュー
- 心の中の男
- 高橋
- 斜めの日
- 日本語学校アメリカン
- 悪魔が来たりてなんかいう
戯曲集…斜めになった日
年に一度、世界が物理的に斜めになる日がある。その日が誕生日でパーティーがしたい男と、それに毎年付き合わされる友人の話。
こういう日常がおかしい(けど、物語上では常識という)設定が大好き!斜めになっちゃうからいろんな制限がかかるけど、それをかいくぐりながらパーティーの打合せをしていく。
誕生日の男の「俺の誕生日の祝い方」が完全にイメージとしてできあがっているのが好きで。友人もなんだかんだで付き合ってあげているところにも友情を感じる。自分の好きなことは、このくらい固めて積極的に伝えていかないとなあ、そしてこんな形で巻き込めたらだいぶ楽しいな。相手は大変だろうけど、そこは祝いの気持ちでなんとか。
動画では、文章で読んでいる数倍変人キャラクターだったので、物語よりそっちに引っ張られて終わった。笑
動画…日本語学校アメリカン
日本語に弱い教師が、外国人に間違った日本語の発音を教えていく。
昔見た動画の中でこれだけは覚えてて、やっぱり最高に面白かった。なんだろう、勢い?ノリ?が心地よい。椿・鯨・雀の全作品の中で一番爆発力のある作品だった。
これについては何か語るより、とりあえず見て!という感じ。
鯨
第九回公演「鯨」は8作品。
- ことわざ仙人
- 超能力
- バースデー
- 壺バカ
- 絵描き歌
- count
- アカミ―賞授賞式
- 器用で不器用な男と不器用で器用な男の話
戯曲集…絵描き歌
「まーるかいてちょん」、絵描き歌を無邪気に書く男と、その男の金をくすねる男。この二人にはそれ以上の関係性がある。
こういう急展開に一気に惹きこまれちゃう。かりそめの1年間でできた自分について、「最初に会った人間がこんな感じだったんだよ」っていう言葉がなんだかじんわりきてしまう…んだけどめちゃくちゃ笑っちゃう。これは動画で見ても面白かった。
動画…器用で不器用な男と不器用で器用な男の話
これも、戯曲集でも動画でもどっちも面白い。器用に生きて若くしてマンションを得たが、冗談とか会話のやり取りの機微が分からない男。芸術の道を志し、軽快なトークで場を盛り上げる貧しい男。
全然違う道だけど、どっちもいいな。この二人はなんだかんだ定期的に会っていてほしい。そういう友情もあるよね。
雀
第十回公演「雀」は8作品。
- お時間様
- 音遊
- プレオープン
- 許して下さい
- 人類創世
- ネイノーさん
- 男女の気持ち
- 雀
戯曲集…お時間様
自分の人生を削る代わりに、失敗を巻き戻してくれる「お時間様」。待合室で秘書と待つ間のひと時。
片桐仁が演じる秘書の茶目っ気が楽しい。切実なほどに振り回されてしまう感じが繰り返される。途中、人生を削ってまで戻ることはない、と前向きな気持ちになったところで、そういう展開になっていかないところも現実っぽくて好きだな。
動画…雀
動物が好きで、言葉が分かる片桐と、それに驚きつつ怪しいと感じる小林。
寂しいから、傍から見れば余計寂しい行動に充足を求める。他人から指摘されても、それでもなおやっちゃう。こういう妙な明るさが大好きだ!
だってよー!寂しかったんだよー!って素直に言える相手がいるって幸せなこと。
「普遍的おかしみ」は文章でより鮮明に、動画で化学反応がおこる
ラーメンズの魅力は普遍的おかしみ(誰でも少なからずおかしいと思って笑ってしまう)だと思ってて、感覚のすれ違い、時間などの概念的なもの、独自の常識を展開するなど…その辺は、この戯曲集で楽しめるのかなと思う。文章にすることで、より鮮明になるというか。
動画ではそこに片桐仁のキャラクター性が加わって予想外の面白さになったり、二人でアドリブを入れあって(戯曲集にない部分もちょこちょこある!)どこか試しながらセッションしていく感じが化学反応で楽しい。
今日紹介した作品以外にも、憎めない男の心の中が知れる「心の中の男」、試し試される友情を描いた「超能力」、行動を起こすためにとんでもない労力をつかってシュミレーションしていく「男女の気持ち」など、人間の興味深い部分を切り取ったものばかりだ。なんかこう、面白い、笑える、そういうもの以上のものがみられる世界だと思う。
(おまけ)まだあと3回、これが楽しめる
ちなみにこの戯曲集は全4巻のうちの第2巻。まだ3冊あるので、同じ作品を文章と動画で味わう遊びがあと3回できることになる…ありがたい!本屋で目に飛び込んでくるのまちつつ、またやるのを楽しみにしている。
(第1巻:home FLAT news)
(第3巻:CHERRY BLOSSOM FRONT 345 ATOM CLASSIC)
(第4巻:STUDY ALICE TEXT)