秋~春にかけては湯船につかりながら本を読むのですが、何度も読み返しているのが「山とそば」です。猫村さんで知られるほしよりこが描く旅の絵日記は、自然体で気取ってなくて、こんな旅がしてみたいなあ〜と読むたびに憧れるのでした。
この漠然とした「いいな〜」という気持ちが何なのか、ちょっと深堀りしてみようと思います。
旅するのは3ヶ所
ほしよりこが向かうのは長野・広島・鹿児島の3ヶ所です。それぞれ「山とそば」「蛇にまかれて」「カルデラのある町へ」とタイトルがついています。だいたいは仕事で行く感じで、仕事の後に旅行をくっつける、みたいにすることもしています。
私は仕事とプライベートをかなりきっちり分けているんですけど、なんかそれ寂しいなって最近思うんですよね。ほしよりこは仕事で出会う編集者や作家の方と自然体で接していて、仕事仲間と友達の間というか、こんな風に等身大でやりとりできたらもっと呼吸がしやすいだろうなあと思います。
小さな絵と、小さな文章と
この本は絵日記で、コマ割りとかはありません。小さなイラストと1~2行の文章がセットになって、1ページにつき3~4個散りばめられています。でも読みにくいとかはなくて、頭の中にふわっ、ふわっと場面が浮かんでくる感覚です。
そういえば、こないだ友達とイメージがどんな風に頭にわくかって話をしていたら、友達が「コマ割りで出てくる」と言っててびっくりしました。おそらく、この本みたいな雰囲気で場面が浮かび上がるんじゃないでしょうか。
ちなみに私は、手帳に書く殴り書きのメモみたいな感じで横書きで色んな向きで出てきます。結構人によって違うものかもしれませんね、みなさんはどうですか?
一緒に作ったり、一緒に感じたり
はじめの長野旅では、いしいしんじと絵本を作る工程が楽しかったです。
旅館の一室という異空間に入って、いしいしんじが書いた文章にほしよりこが絵を添えていきます。これにあう絵はスケッチが必要だと思ったら、「ちょっとスケッチ行ってきます」とノート片手に出かけていく。
最後は成果物を床に並べて、「いいのできたねえ~」と眺める。
この創作風景が好きで、何度も読み返しています。
続く広島・宮島では、「蛇に巻かれて」とあるとおり、ヘビに会いに行くんですよね。もともと苦手だったのが、もらったヘビのプレゼントに愛着が湧いて、こうして旅行で来てしまうというのが面白かったです。
編集者の人との日常ミステリー会話も個人的にすごく好きなポイントでした。ぶらぶら歩いてるときに、わけわかんない話するの大好き。
一人の旅もまた楽し
この本が楽しいところは、みんなで旅行するけど、その後1人でも旅を続けることです。「もう少し、ここを味わいたい」と延泊して、モーニング、旅館でちょっと仕事、散策、と思うままに行動していきます。
旅の工程に縛られることなく、自分の感覚で過ごす時間…これぞ旅の醍醐味なんじゃないかと思うんです。こんな風に、思うまま旅してみたいな!てかまず、その時の気分で延泊とかできる人間になりたい!
ああ、旅したいし、こんな風に描いてみたいし
この本は何度も読んでるので、あえて読み返しながらではなく、いま私の頭に残っているイメージだけで話してみました。旅行にいったあとの記憶をたぐり寄せてる感覚。あれ、楽しいですよね。
ああ、仕事とかプライベートとか関係なく、こんな風に人と旅してみたい。一人でも、もっといろんな所に行っていろんなことを感じたい。そしてこんな風に、感じたイメージを形にできる人になれたら…それって豊かだな、と思います。
まだまだ肩に力が入ってる。ほぐして、ほぐして、まずは定期券内の降りたことない駅にでも行ってみようか?そんなことを考えてみるのでした。