BOOKS:LIMELIGHT

読んだ本を、感想とともに紹介していきます。

違うって、こんなにすばらしい。「森薫・入江亜季展」に行ってきた!

ある週末、森薫・入江亜季展に行ってきました。
同じ冊子に連載する漫画家二人による作画、創作風景などがふんだんに盛り込まれた展示でした。

前日になんというか…「焦る2人飲み」があって。その子はすごく活動的で、しかも努力が実を結んでて眩しくてちゃんと見えませんでした。同時にジトーっとした嫌な焦りを感じて、息抜きに見に行ったのでした。

失礼ながら、お二人の作品は読んだことがないのです。素敵な絵だなってその気持ちだけで行ったんだけど…そこには、原作を読んでなくても見応えたっぷりな際立った個性と探求が溢れていました。

見終わった後、焦りは小さくなって、「ああ、違うっていいなぁ!」と心の底から思えた自分がいました。今日は何がこんなに胸に響いたのかを、思い出しながら書いていきます。

共通項はハード面

この展示は、配置が迷路みたいでした。基本的には右が森氏、左が入江氏なんだけど、たまに合流したりして。これはきっと意図したものなんだろうなと感じます。

二人は同人誌出身で、同時期に漫画家デビュー、同じ雑誌で連載をしてきたそうです。デジタル絵主流になっているなか、アナログ描きを貫いているところも共通点。たどってきた道とか、手法という意味でハード面は同じなのかな、と思いました。

全然違う!ソフト面

←森氏/入江氏→

同じ場所で連載し、同じ手法で作ってるのに、出来上がったものが全然違くて!そしてどっちもすごく魅力的!っていうのがこの展示の最大の見どころだと思います。
以下、違いとして感じたところを挙げてみます。(非読者目線なので変な部分があるかも…見逃してください)

●線や色の感じ

森氏…線、色、ともに緻密で、これって、手書きなの…?と思うほど(近くで見たらペン跡があってまた驚く)

入江氏…伸びやかに踊ってるような線で、もう見てるだけでうっとりしました。繊細だけど大胆、みたいな弱くない何かも感じました。

●表現のスタイル

森氏…掘り下げ、掘り下げ、掘り下げる

芯というか、柱がある。あとは試行錯誤がすごい。展示の絵の脇に創作風景の説明があったんだけど、そこで感動したのがこの言葉。

誰でも最初から全てを知っているわけではありません。(中略)
それでもとにかく描けば何が間違っているのか、何を知らないのかが解ります。

これって、すべての学びに通じるなぁ。失敗を恐れてやらないんじゃなくて、知りたいことをもっと知りたいからやるんだなあとじんわりきました。

入江氏…見たもの、感じたものを書く

風のような軽やかさ、でも絶対揺るがないしなやかさがある。(この表現2度目)
何を隠そう、私はこの方の絵とセリフ選びに魅せられてしまったので、呆然としてあんまり覚えてないのです。感覚的な言葉にできないイメージをもらいました。

最後の未来の漫画家へのメッセージがピークで…引用しようと思ったんだけどなんかこれは一部抜き取っても伝わらない感じなので、かいつまんでいいます。

  • 人が見たいものは自分の外側にいくらでもある
  • 自分が感動したものを表現すればよい
  • 手法はなにも漫画じゃなくてもいい

伝わればいいのです。
漫画家じゃなくてもいいのです。やりたいからやる。
そうしてやっと人の人生が始まると思っています。

漫画だけじゃなく、何かを表現しようとする人にはきっと響くはずです。私が日々やっていることへの意味をもらった気がしました。

職人と旅人

2人の違いをイメージで言うと、職人と旅人の違いという感じがします。違うっていいなぁ。どちらにも憧れてしまいます。ひたむきな真っ直ぐさがあるからだと思います。

読んでみたい本

漫画読んでもないのに、こんなに作者に思いを馳せてよいものでしょうか?そんなこと考えてる間に読もうー!集めようとしているのはこの2つです。

・乱と灰色の世界

なんというか見てみて心地よい、今は絵を見た上でのただのイメージなんだけど、これが一冊を通してみたらどう変わっていくのかを知りたい!

・乙嫁語り

ここに出てくる小さくて眉毛が太めの女の子がめちゃめちゃ好きになっちゃったので、もっと見てみたい。エマもかなり好きそうな世界なので読んでみたい。

焦らず自分の世界を深めよう(そして、伝えたい!)

気晴らしにと何気なく行った展示の見応えに圧倒されつつ(原画や創作風景がたくさんあってもう本当にすごかった…!)、2人それぞれに世界を深める姿を見て、何も焦る必要はないと強く感じました。

励むべきは、自分の関心を深めたり、目で見て感じたことを伝えるってことです。同じ物を見ていても、人によって思うことや考えることは違うものです。

創作とか以前の、人対人のやりとりとして。「私は世界がこんな風に見えるんだよ」ということを、伝わる方法を模索して伝える。

わたしも友人の活躍に圧倒されるだけでなく、自分が日々見たもの、思ったことを一番伝わる方法で伝えてみたいな。まだまだ伝え方のバリエーションをを試せてないな。展示を見た後は、そんなことを前向きに考えることができました。

展示は2月末頃までやっているので、それぞれの作品を味わった後にもう一度行くつもりでいます。2人の模索をまた見たいし、読む前と読んだ後で感じ方はどう変わるのかを知りたい。今から楽しみです。

展示会情報

漫画家・森薫と入江亜季ーペン先が描く緻密なる世界ー
2024年11月2日~2025年2月24日まで
世田谷文学館 - 文学を体験する空間|展覧会

(おまけ)ドロヘドロの寄稿イラストがあった!

私もむっちゃ好きです~~~また読も。