BOOKS:LIMELIGHT

読んだ本を、感想とともに紹介していきます。

夢中で打ち込む40代の青春漫画(いくえみ綾 ローズローズィローズフルバッド レビュー)

いくえみさんが、なかなかリアルな中年もの漫画を描いてくださっております。

40、50代と年齢を重ねても、夢中で打ち込めるものがあるっていいな。そしてその行動力が未来を変えていく様子が覗けるのが、この「ローズ ローズィ ローズフル バッド」です。

物語の主人公は40代未婚・女性漫画家のしょうこさん。

これまでの漫画家人生は決して順風満帆ではなく。デビューしても鳴かず飛ばずの少女漫画から、作風を変えて挑んだキャラ「ファブ郎」がヒットしてなんとか漫画家として生計を立てられたものの…どうしても、少女漫画が、描きたい!!と再起をはかる話です。

ベースは恋愛漫画なんですが、わたしはしょうこさんの"イタくても、やりたい気持ちに忠実なところ”に感銘を受けたので、そこに焦点を当てて書いていきます。

年齢重ねること、ままならない仕事。「イタい」日々が心に響く

この物語はこう…イタいのがいい。年齢を重ねた女性の描写がすごいリアルなんですよね。見ててこっちまで恥ずかしくなる共感性羞恥が発動しまくります。

イタさ①気が付くといろんなことに疎くなっている

まず、しょうこさんは40代で漫画一筋に生きてきただけに、服装、髪型、メイク、などいろんなことに疎い。ハレの場などでちょっとおしゃれする、がわからない。もうこれが…今の自分とオーバーラップして目を覆いたくなります。

恋愛マンガを書くために、社交の場に出たり、出かけたりするのですが、その度にむずむずするようなイタさが溢れてきます。

イタさ②夢叶わず、現実を生きていくこと

キャラものマンガを書くことについての満たされない思い。自分の作りたい漫画は少女漫画だったのに、自分が描いているのはキャラもの…でもその作品で賞を取ったりもしていて、決して卑下するようなものではないのですが。本人はどこかいつも満たされない思いを抱えています。

しょうこさんは現実に悶えながらも、少女漫画への希望を捨てません。プライドなんてかなぐり捨てて、できることは全部やる!という姿勢に、本気度と人間味とが相まって魅力を感じます。

イタさ③ファブ郎がいいやつ。胸が痛い

このイタさは「胸が痛い」ってやつなんでちょっと質が違いますが。

この物語は基本しょうこさん視点で、たまに「ファブ郎」が進行役として出てきます。明るいキャラでしょうこさんの行動に突っ込んだりしてるんですけど、少女漫画が描きたい主人公にとって、ファブ郎は「これじゃない」んですよね。

わたしでごめんね、としおらしくなったり、主人公の幸せをどこまでも願う健気でいいやつ…。最終的には、しょうこさんとファブ郎はいい距離感で共に歩んでいけると信じています!

人の目じゃなく、自分の気持ちを見て!

著者のいくえみさんは、「イタいのなんか気にしないで、やりたいって思うことはやろー!」ってことを教えてくれてるんじゃないかなと思っています。

もう若くないし、こんなこと言ったら、やったら、イタいんじゃないか…そう、イタいんですよきっと。でもそんなの気にしてたらなんもできないまま終わっちゃいます。

しょうこさんはいろんな人に相談して、アドバイスもなんだかんだちゃんと聞いて、何より自分に正直にやりたくてやってるから、いろんな人が手を差し伸べてくれるんだと思います。 

方向性が決まって、やりたい気持ちが先行して、寝る間も惜しんでわーーーーってやってる時。こういうのが何より幸せな時間だな〜、とあらためて思いました。

いま3巻まで出ていますが、少し未来のシーンがあって、しょうこさんの雰囲気がすごくいい感じなんです。ここから、どう展開してその姿になるのかと思うと今から楽しみです。

まとめ

ローズローズィローズフルバッド は、40代の理想…かといわれるとそうでもないんだけど(ごめんなさいしょうこさん)、リアルなところでなんかこう…年齢を重ねることへの恐怖が軽くなる漫画です。読むほどに癖になる面白さがあります。

いくえみ綾って本当にすごい。学生のほろ苦い恋愛もの「潔く柔く」、30手前のしんどい不倫もの「あなたのことはそれほど」、30代後半の幼馴染もの「1日2回 」、そして40代は「ローズローズィローズフルバッド」、ほかにもまだまだあります!しかも割といつも同時連載してるんですよね。頭の中どうなってるんだろう…?!

この漫画は、歳をとるイメージを現実度高めで知りたい人、いくえみさん作品の幅の広さが知りたい人にはとてもおすすめです。ほんと、主人公のしょうこさんが真っ直ぐで擦れてなくて、わたしは大好きだなあ。