光浦靖子著「50歳になりまして」を、今日もまた読んでいます。
私たちはスタート地点が違うだけで、みんな等しく老いていく。せっかく歩むなら、こんな風に…著者の言葉を借りるなら「ひん曲がったなりにナチュラルに」生きたいです。
付箋だらけになっちゃったこの本を、今日は流石にまとめていこうと思います。
本の内容
この本は、タレントの光浦靖子がカナダに留学しようとするもコロナ禍で行けなくなり…じゃあどうする?となった期間を綴ったエッセイです。
考え方の癖や話の展開の仕方、どこまでも「笑い」を忘れない姿勢など、読みやすさと読み応えが共存した楽しい本でした。
そしてこの本は、著者の日常を切り取るなかで、芸能界に長く身を置いた自身の半生を振り返り、人生の後半に向けて一歩を踏み出すまでの軌跡でもあります。
車で切り返すように、自分を立て直す
この本はちょっと変わっていて、エッセイに入る前に1つのコラムがあります。文藝春秋で留学を決めた時のことを書いたもので、気になる人はここだけでもいいから読んでほしい!と思うぐらい思いが詰まったものでした。*1
このままいくと、私はいつか、壊れるな。どうにかしなきゃ。
光浦靖子著「50歳になりまして」より引用
芸能界で働くってとんでもないことだと思います。何かをすれば叩かれ、何もしなければ「消えた」、歳を取ったら「劣化した」と言われる。想像しただけで気が滅入ります。
八方塞がりになりかけた著者は、留学することを決意します。
分岐点に戻って、もう一つの人生も回収したい
光浦靖子著「50歳になりまして」より引用
私がイメージしたのは、車の切り返しです。一旦バックして、方向を定めて、再発進する。
次章から始まるコロナ禍での日常は、生活しながら自分の半生を振り返り、次の道を模索する著者の姿がのぞけます。
ひん曲がったなりに、ナチュラルに
留学したいけど、コロナで行けない。仕事は先にセーブしてしまっている。この先どうなるか分からないあの時を私も過ごしましたから、不安が蘇ってきます。しかも、ただでさえ不安なのに、家の更新なども考えなくてはならないのが本当に大変そうでした。
妹の家に居候したり、一生懸命に休もうとしたり、英会話を習い始めたり。老いに関する描写はかなり鮮明で、少し先の自分が見えたようでした。
不安ななかでも動いては考え、自分に折り合いをつけていく。それは肯定することだけじゃなくて、諦めて受け入れるといった、一見後ろ向きのものも含まれます。
決して明るい話題じゃないのに、この方が話すと笑えちゃうからすごいです。
どうです、さもしいでしょう?
光浦靖子著「50歳になりまして」より引用
ふふ、たくさん抜き書きした文章の中からとってくるのがこれでいいのか分からないのですが。私はこういう風に言えちゃう人になりたいなあ。
醜い自分の一面を受け入れないことには、この言葉は出せないんです。早くそちらに行きたいな。
定めた目標は「おばあちゃん育て」
この打たれ弱い偏屈なおばあちゃんの得意なことってなんだ?
光浦靖子著「50歳になりまして」より引用
50歳、ここからの人生後半で今がいちばん強い!と結論づけた著者が決めたことが、「おばあちゃん育て」なのが、はちゃめちゃに愛しくなりました。
長所を伸ばすか?スキルを身につけさせるか?
何を経験させて、性格の難はどう修正するか?
ちょっと離れて他人行儀に考えることで面白がっていく。自分のこととして置きかえると、なんだかわくわくしてきませんか?
他人に対して感じた「羨ましい」を自分にしてあげるのも、かなり素敵な方法だと思います。真似して、実践したいところです。
迷えるわれらの希望の光
この本を読んでから、なんとなく著者が光って見えるようになりました。迷えるわれらの希望の光…!
現在進行形でおばあちゃん育てを実践中なことにも、励まされます。今の姿は、続編の本や、インスタで見ることができます。
この本もとてもよかった。「50歳になりまして」は基本的に一人でぐるぐる考えている感じなんだけど、カナダに行ってからは積極的に人に頼っていくんです。ここでは一人じゃ生きていけないから。シンプルながら、強力なメッセージでした。
自分の気持ちに素直になると、人間性が表に出るのでしょうか。今の彼女はなんだか少女のようです。伸び伸び生活しているのを見ると、笑みがこみあげてきます。
本に書いてある彼女の夢が、叶うといいなあ。そして、私も後に続きたいな、と思うのでした。
(おまけ)ネットで読める光浦さん
8年前の2017年に、ほぼ日とコラボして刺繍ブローチ展をやった時のインタビューがあって、こちらも大変良かったので貼っておきます。
「あの丸の中だけでも自由にいさせてください」
この慎ましい言葉も素敵です。どこまで行っても笑いのエッセンスを忘れないところも。
はは、めちゃくちゃ全肯定なレビューですね。30代後半から上の、ちょっと神経質でぐるぐる考えがちな私みたいな、そこのあなた!さわりだけでも、一回読んでみてください。胸に響く部分が、きっとあると思うんですよね。
*1:アマゾンページのサンプルで読めます。あと、ここにコラム部分だけありました!→留学の話|光浦靖子|文藝春秋digital