190ページくらいの短い本なこともあり、久しぶりに一気読みした。
額賀澪『拝啓、本が売れません』
著者は「松本清張賞」「小学館文庫小説賞」をW受賞して華々しく作家デビューしたものの、思うように本が売れない日々に不安を抱えている。
どうやったらもっと自分の本が売れるのだろう?この問いの答えを探しに、担当編集と2人で「本を売る」各分野のプロフェッショナルに知恵を借りにいく。
- 敏腕編集者
- スーパー書店員
- WEBコンサルタント
- 映像プロデューサー
- ブックデザイナー
伝手を頼ってインタビューを続けるうちに、忘れてはいけない大事なことや、今の自分にもできることに気がついていく。そして、実際にアクションを起こしていく。こんなふうに、現状を打開するために行動に移している人のことが好きだな!
最後は賢人たちの知恵をもとにこの本を仕上げ、さらに自分が書いた小説ともリンクさせていく。最後の畳みかけ、大きなうねりのように景色が変わって、すごかったな。
本の中でも言ってたけど、現実世界のRPGを見ているような気分。著者が主人公で、徐々に仲間が増えていく。苦しいことも、仲間とともに知恵を絞ってコツコツ敵を倒していけば、きっといい世界になると信じて歩んでいく。
私たち読者は、「そんなうまくいく訳ないじゃん」と現実を見ているようで、同時にそんな物語をどこかで切望しているところがあるなあ。そんなふうに思った。
ちなみにこの「敵」っていうのが、職業によって違うのかなあと思いきや、みんな同じなのがミソ。個人的には「妥協」てことになるんじゃないかと理解した。
妥協するとどうなるか。はじめはバレないようで、小さく、一つずつ狂っていく。
「前例の通り」は古くなり、「流行り」を狙えばわざとらしい。
現状を打開するため何ができる?それは、人を巻き込んでやるから面白いんだろうなあ。そのうえで、やっぱり起点の核が最重要なのも趣深い。物語は主人公ありきなんだ。
個人的には、この「やってみた本」をかなり気に入っている。ただ、人を選ぶ本でもあるかもしれない。
- 根本的に仕事があんまり好きじゃない人
- 作家の「裏側」には興味がない純粋な読者
には、きっと響かない。
逆に、これらを求めている人にはお勧めしたい。
- 作家の生存戦略の一例を知りたい
- 出版業界の裏側でどんな動きがあるのか知りたい
2018年発売なので、特にWEBのあたりの情報は古くなっている感じがある。だけど、大事な部分はそう大きくは変わっていないと思う。なにより、現状を突破しようとする泥臭さが、オブラートなしの切実な思いが、この本にはある。
……ただ、なんというか、この「伝手」っていうのが一番難しいんだろうね!まずは、なるべく生きたい世界の近くまでいくってことが、第一歩ってことになるのかな。
ふう。
別に勇者になりたいわけじゃないのに、なんだか憧れてしまったよ。
(おまけ)気になる著者の作品
著者の紡ぐ物語は、学生時代を切り取った爽やかなタッチのものが多いらしい。
この本との落差でどう受け取ったらいいか分からなくなっちゃいそうだけど、読んでみたい。
読むならやっぱり、本にも出てきたこの「風に恋う」になるのかなあ。紹介文を読んだ限りだと、「さよならクリームソーダ」は好きそうな予感がする。
また気になる作家が増えてしまった。楽しい。


