佐々木真著『「分かった!」と思わせる説明の技術 知識ゼロの相手にも伝わるようになる本』を読んで、思ったことを書いていきます。長くなったので、三部作として同時投稿します。まずは本の内容についてのレビューです。
この本の著者は、「わわわIT用語辞典」という有名な用語解説サイトの運営者です。1万語以上の単語について「どうやったら伝わるかな?」を試行錯誤し続けてきた、いわば「説明のプロ」。アクセス数は月間200万PV以上を誇り、ゆるかわなイラストやコラムなどの魅力もあるため、日々更新を楽しみにしている私のような読者がたくさんいます。
本の内容は、「詳しく知ってる人」から「全然知らない人」への説明の際に大切な考え方や方法を、あの手この手で教えてくれるというもの。それと同時に、個人サイトを10年以上運営してきた工夫を見せてくれる本でもあります。
ちなみに、今読んでくださっているこの読書ブログは、開設して2年半、これで384記事になりました。特定の分野の専門家ではない私でも、このブログの中で日々あれこれ考えながら説明を続けていたりします。
読んでくれている人たちは、紹介する本を読んでいない人がほとんどです。「本の中身を知ってる私」から「まだ知らないみなさん」に伝えるために必要なものがこの本の中にきっとある、と思ったんですよね。
読んだ結果、受け取りきれないくらいありました。著者のサービス精神にはいつも驚きます。初めは具体的な行動に落とし込んで話していこうと思ったのですが、何度もまとめていくうちに濾過されていき、この言葉に集約されました。
分かってほしいなら「ゆるさを愛せよ」
これだけでは、ちょっと訳分かんないですよね。本の内容を振り返りながら詳しく話していくので、もうちょっとだけ聞いていただけたら幸いです。
ゆるさ①まずは読んでもらうために間口を広げる
まずはじめに、どんなに分かりやすい説明も、読んでもらわない事には何も始まらない。聞き手の負担をできるだけ減らしてとにかく読んでもらおうとすることが大切とあり、「その通りだ~~」とうなりました。
そのために出来ることを、本から3つ抜きだしました。
- 説明を聞く理由を用意する
できるだけ、聞く側の最終的な目標に近いことが大切。ゴールを共有するイメージを持ちました。 - 一言で説明すると?作戦
説明したい内容を一言で表現して幹を作る。そこに一つだけ枝葉をつけた短文を連ねていく。 - 短いは正義
1文字、1秒でもいいから読む時間を短くする。その意識が相手を楽にする。
間口はゆるゆるに広く。面白い本の話するけど、聞かなくても大丈夫~?みたいな余裕をもって話すことが大切みたいです。
ゆるさ②分かってもらうために、「あえて」簡潔さを選ぶ
知らない人に分かってもらうための心構え。それは「正確な説明は諦める」というちょっと驚きの内容でした。そんな風に考えて用語解説をしていたとは思っていませんでした。
「難しいこと」は、簡単かつ正確には説明できないからこそ「難しいこと」なのです。
だから、まずは諦めてください。「簡単」か「正確」のどちらかを犠牲にする覚悟を持ってください。「難しいこと」の説明において「簡単」と「正確」は両立できません。
その上で、分かりやすい説明をしたいのであれば、諦めるのは「正確」の方です。
佐々木真著『「分かった!」と思わせる説明の技術』より引用
このニュアンスは覚えておきたいので、長めに引用させていただきました。
ちなみに、できることは「端折るか薄める」。大胆にカットするか、別のものに置き換えて薄めて伝える。より簡単なのは前者なので、まずはここから。なんというか、決意する「ゆるさ」ということです。
この部分、言葉としては覚えましたが、まだ全然分かってないです。やりながら覚えていきたいところです。
ゆるさ③主義を定めて、許せるゆるさを
本が発売される前に、サイトのコラムで「この本の内容を一言で表す一文が目次にある」と著者が話していました。私は「説明を分析する」かなと考えましたが、恐らく「おもてなしの視点をもつ」だったと思います。
相手を「もてなす」か「分析する」か。これは似ていることのようです。
著者の表現は一貫して「おもてなしの視点を」でしたが、これがきれいごとだと思う人には、「敵を分析する」と思ってくれと話していました。
これは主義の問題です。
また、分かったと思ってもらうために簡潔さを選んだことで、同じ分野の人から「それは違う!」と言われることが必ずあることにも触れていました。そのうえで「解釈違いについては全無視」を選ぶのも潔くて良かったです。ちょっと笑ってしまった。
これは主義の問題なのです。
自分に違和感のないように。自分が許容できる範囲を許し、ゆるめて楽にしてあげるイメージを持ちました。
分かってほしいなら「ゆるさを愛せよ」
自分の思っていることを分かってほしい時、一番初めに思うのは「ちゃんと説明しよう」ということです。これが多分一番、説明を厄介なものにしています。
著者は、知識や経験など何にも前提がない人に対しては、30%分かってもらうことを目指しています。
横文字が入り乱れるIT用語も、意思の伝達も、感じたことの共有も、100%理解するには結構な労力がいります。というか、そもそも完璧になんて無理な話だし、聞く相手もそれを求めていないことのほうが多い。
まずは大枠を、なんとなく知りたいんです。そのうえで、詳細をお互いに擦り合わせたりして目的の場所に進んでいく。
知っている側からしたら、これってすごくもどかしい。相手も知っている前提でじゃんじゃん話したいし、ニュアンスをなるべく変えないで細かく話したい。準備した言葉は全部駆使して伝えたい。
…でもね、これは重いんです。そんなこと、いきなり言われたって困っちゃいます。
まずは「ゆるさを愛せよ」。どうやったら気軽に聞いてもらえるかな?と間口を広げて、なんて話したら納得してもらえるかな?と時には端折って薄めて伝える。その積み重ねが分かりやすい説明を生み、読者との信頼関係を作り、こうして本という形になって結晶化されたのです。
…すごくない?読めてよかったです。ただ、著者が言う通り、この本は実践しないことには身につきません。人間関係、仕事、ブログ。幸い、日常は説明することであふれています。
「ちゃんと」伝えようとするまえに、まずは「ゆるく」説明してみよう。実践は始まっています。
