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読んだ本を、感想とともに紹介していきます。

エンデのメモ箱(ミヒャエル・エンデ 著、田村都志夫 訳、岩波書店)

今日はミヒャエル・エンデの思想のかけらや、本人が振り返る記憶、物語になる前の物語を覗かせてもらえる「エンデのメモ箱」の話をしていきます。

エンデのメモ箱

着想を書きとめたメモや創作ノート、詩や短い芝居、辛口の文明批評、児童文学に関する日本での講演、生い立ちを綴ったエッセー、さらにはインタビューや手紙。百十数の短編から、エンデの多彩な面が万華鏡のように浮かび上がる。ファン必読の書。物語作家でもあり思想家でもあった著者の創作の秘密が、いま明らかになる。

ミヒャエル・エンデ「エンデのメモ箱」岩波書店 裏表紙の紹介文より引用

すごいたくさんあるな~と思って数えたら、メモ書きから講演会の文字起こしまで全部で114個もお話がはいっています。読み応えがあるわけだ。

創作に関するところでは、善と悪、表と裏、建前と本音。物語の一部になるかもしれなかったかけらたちは、こんなあべこべの世界が多い印象でした。登場人物自体が何かの比喩なんだろうか…?この言動は何を意味するのか…?表現の巧みさにどんどん疑問が沸いて、惹きこまれます。想像力が搔き立てられるって、こういうことをいうのかな。

具体的には、「よくある幽霊ばなし」は肝試しのような半分おちゃらけている雰囲気からの友人の結末にぞわっとしましたし、「死と鏡‐メルヒェン」は、知らなければ幸せだったのだろうか、いやでも…と読み終わった後も飲み込みにくい、なんともいえない気持ちを感じました。構想の段階なんだろうけれど、もうこの話で十分だ、と思うものばかりで満たされます。

また生い立ちに関しては、少年期に第二次世界大戦があったため、著者はナチスドイツの理不尽な世界を実際に体験しています。それを振り返る「祖母は中国庭園にすわり、泣いている-わたしの終戦体験記‐」では、自分の力ではどうにもできない世界で身の回りに起こる出来事一つ一つに、著者自身は幼いながらもどう行動していたのか、細かく描写しています。

あとは日本で講演もしていたんですね。「永遠に幼きものについて-国際児童図書評議会東京会議での講演‐」では話したことが文字起こしされています。もっともっと大むかしの人だと勝手に思いこんでいたのでおどろきました。他の物語からの引用を交えた、等身大の語り口が印象的でした。その後調べたら日本の翻訳者の方と結婚もしていたんですね!日本にゆかりがあったんだ、とこれも発見でした。

何度も何度も読み返したのは「愛読者への四十四の問い」です。とくに胸に響いたところを一部抜粋します。

現実に対してわたしたちがもつ観念が変われば、現実も変わるのでしょうか?

それを表す言葉がまだない、そのようなことを考えることができますか?……

おおぜいの人が同じ本を読むとき、本当にみんな同じものを読むのでしょうか?……

小説でカフカが言わんとすることが、評論家がその小説を解釈して述べることであるとすれば、なぜカフカはそれをはじめから言わなかったのでしょうか。……

本当に問いは四十四問だったか、数えなおしてみますか、それともわたしの言葉をそのまま信じますか?

ミヒャエル・エンデ「エンデのメモ箱」より引用

どれもこれも、唸ってしまうものばかりじゃないですか?とくに太字の部分は、自分がブログを始めた原動力の一つだと感じました。本は1冊なのに、響く部分が一人ひとり違う。受けとり方も全然違う。そこから派生する自分なりのイメージや考えかたも違う。面白いです。私なりの考えですが、これは他人だけじゃなくて「過去の自分」にもいえると思っていて、私は今の自分の感想を書きながら、10年、20年後の自分が見てどう思うのかが楽しみで書いているところもあります。

…と飛躍しましたが、最後にこのたくさんの問いが、本当に四十四あったのか数え直しますか?と問うユーモアがなんだかとても好きです。わたしは、数え直さないでみました。信じるか信じないかはって…ってやつですね。どんな話も。

実はエンデ作品、小さいころ読んだ…かな?くらいでほぼ知りません。食わず嫌いしてないで、次はモモを読みたいと思っています。

↓その後、読んでレビューしました。

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