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読んだ本を、感想とともに紹介していきます。

【総括編】モモ(ミヒャエル・エンデ作、岩波少年文庫)読書レビュー

モモ (岩波少年文庫)

前回話してたモモ、読み終わりました~、約400ページ。いやあ、あっという間でした。読みやすくてぐんぐん読んじゃいましたね。

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さっそくですが結末の感想は、…そうか!これ児童文学書か!でした。お子さんが読んでも大丈夫な、ほっとするラストでした。(のちに少し変わるんですけど)

ものたりなさそうって?…正直そうです!私は素直じゃなくなっちゃってるのかな。なんかこう…きれいに収まりすぎてるような感じがあったんですよね。穏やかな日常から始まり、徐々に時間が無くなる不穏な空気…からのみな散り散りになる切なさ、色々あったじゃないですか今まで。それがすっかりよかったね!って。まあそれが一番いいんですけれども。

せっかくなので、わたしが思い描いていたラストを話してみます。

「時間は無事に町の人々に戻った。みな再会を喜びあい、これまで身に起こったことを切々と語りあう。蝕まれた心や体はそう簡単には元に戻らない。手遅れの人だっている。けれど時間を分かち合うみんながいるから、乗り越える気力が沸いたり、病を受け入れて余生を豊かに過ごしていけそうだ。また同じ過ちを繰り返さないよう、モモは時間の尊さを歌うことで繰り返し伝えていく………」

ああ、腑に落ちる。すごく腑に落ちる。自己満足。(ある部分では、この通りのところもあります)でもこれ書きながら思ったんですけど…ラストできれいなところしか触れていないのは、考える隙(すき)を与えているのかもしれない。もう一度読んでみたら、最後妙にふわっとしているんですよね。あとは自分でふくらませてねってことみたい。

そうすると… いやこれおもしろいな、自分で考えるだけでもいくつもストーリーが湧いてくる。前回のレビューのときにジジについて熱く語りましたけど、最後ジジは(というか全体的に)話す描写がないんですよ。今までの流れを考えたらほんの少しでもやりとりを描いていいはずなのに、全くそれがない。ジジはわが身に起こった壮絶な体験と日々を、改めてモモにどんな風に話すんだろう。モモはそれにどうやって答えるんだろう。きっと心に温めているだろう、モモに伝えたい大事なことは伝えられるかな。モモとの再会で新しい物語をまた思いつくだろうから、夢が叶う絶望を知ったジジは次にどんな物語を紡ぐんだろう。いやーーとまりません。

本を読んだあとに他の人の感想を聞いたり、一緒に物語のその後について考えたり、はたまた自分で物語の続きを紡ぎはじめる人もいるかもしれない。それって、モモと町の人たちの生活みたいです。もしかしたら、このさらっとみなまで言わないラストはそんな時間を過ごしてほしい作者の意図があるのかも…?と深読み夢想しながら今日のレビューは終わりです。

この作品は、時間の概念について社会の仕組みそのものに疑問を投げかけるような内容でもあります。なので次はやっぱりそのことを【時間編】として話したいのですが、言語化するのに時間がかかりそう…ちょっと寝かせて、考えを熟成させてから話したいです。他の方の感想なども読ませてもらいながら、結論を出すのもよいかもしれませんね。そのくらい、時間に関するところはジレンマのある課題だと思います。

↓モモの登場人物についての記事はこちら

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