BOOKS:LIMELIGHT

読んだ本を、感想とともに紹介していきます。

芥川賞受賞作「ハンチバック」を読んだら考え込んでしまった

“生きた証を残したい”っていうのは、いつ頃から芽生える感情なんだろう?わたしはこれまで生きてきて、あまり考えたことがないかもしれない。そんなことより仕事、家族、趣味、毎日やるべきこととやりたいことで精一杯だったりする。

ハンチバックを読んでから、生きた証の残し方を考え込んでいる。迷宮の始まりな気がする。

(いつもながらに、ネタバレに注意を払っているつもりでも、気がついたら漏れているようなところがありそう。読むのを楽しみにしている人は、読んでから是非!)

主人公は、先天性ミオパチーという筋疾患を患う40代くらいの女性。グループホームに住み、10畳ほどの自室で通信大学に通いながらライターとして仕事もしている。

中盤までは、なんだかモヤモヤする本だな…っていう気持ちが先行していた。

障害がある人に対して配慮のない世界と、健常者への憎悪がすごい。当たり散らされているような気持ちになってなんだかなぁ…っていうモヤモヤが蓄積していく。

自分が悪いわけではないのに。なぜわたしが?どうしてこんなことに。こう思う気持ちはわかる。と同時に、主人公(および著者)が求めているのは理解や共感じゃないことも分かるから、どうしたらいいのか、わからない。

「リアリティは感じるけど、この憎悪をどう作品に昇華させるかがみたいのになぁ…」気持ちをそのまま文章にしただけに感じて、こんなメモをとっていた。
でも、後半からはこの長い前振りが効いてくる。憎悪を長い間醗酵させ続けたからこそ、それでも懸命に生きてきたからこそ。主人公のとる行動に納得する。そして最終的にわたしは、捨て身で生きた証を残そうとする主人公の支持者になった。

考え方は偏ってるし、倫理的にもおかしい。でも“生きた証”っていうのは、死ぬことを想定したものだ。死ぬときにそんな価値観は必要あるのか?主人公の抱える理不尽な世界はめぐりめぐる。

わたしは一旦、このことについて考えるのをやめる。いつだって今しか生きれないと思うから。正解などないだけに、いくらでも考えてしまいそれで人生が終わってしまう。それなら今を生きたほうがいいとわたしは考える。

これは人生がまだまだ続きそうだからで、終盤となると話は変わる。体が次第に朽ちて死を意識した時、わたしはこの作品を思い出すと思う。

それにしても…SNSには気をつけよう。本当に気をつけよう。

(この本は、Audibleで聞きました。)

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