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読んだ本を、感想とともに紹介していきます。

実写化ドラマ最終話「自転しながら公転する」感想。ドラマ独自の言葉遣いで、いい着地を見届ける。

実写ドラマ・自転しながら公転するの最終回「足りないふたり」観ました。3話構成で、2話のTVerお気に入り数が4.6万人、最終話は12月29日時点で6.3万人まで増えていました。

前回気になっていたプロローグとエピローグはやらなかったですね。その分、都と貫一のやり取りに終始していて、いい感じに着地してました!個人的には最終話で急上昇です。ああ、最後まで見てよかった…!!

1・2話でごちゃごちゃ言っててごめんなさい…と反省しながら、最終話のいいなと思った部分をレビューしていきます。

本で読んだときの響いた部分と重なるところがあるので、解釈が本寄りになるかもしれません。こんな風に受け取った人もいたんだな~という感じで読んでいただけたら幸いです。(ネタバレあり。俳優さんは敬称略で失礼します)

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言い合う都と貫一

他人まかせで自分がない都と、勝手に自分で結論を出して心を閉ざす貫一が、お互いをさらけ出して言い合う部分。ここ、小説でもかなり好きな部分だったんですよね。本だと熱海旅行での出来事だったけど、ドラマでは都の実家近くの公園になってました。

都の「不安がない振りなんてできない!」「中卒で社会に出て苦労したんだろうけど、高卒の資格とればいいじゃない。協力するよ。」

貫一の「後でごちゃごちゃ言われたくない」「やだ…。わか…別れたくない!!」

二人はすれ違いそうになるけど、都が貫一を蹴り飛ばして「私は別れたとは言ってあげない。中卒で稼ぎがないからフラれたってところに逃げ込むだろうから。」って迫るところで、貫一の琴線に触れる。

二人の立ち位置が逆転した瞬間でした。

貫一のうんちくターン!

「日本人の2人に1人は癌になる。自殺する人は年間2万人強。少子高齢化率は世界でダントツトップ。社会保障費はバンバン上がってる。いまの日本人で不安じゃない人なんていないんじゃないか?」

「運命?運命を信じるのか?つまり…ラプラスの悪魔を信じるのか?」

責められたり、自分の立場が弱くなると、貫一はうんちくを語りがち。でもこれがすぐさま出てくるってことは、貫一も同じく不安で、同じく運命はあるのかを一度しっかり検討したことがあるという事なんじゃないかな。

強がってるけど理論武装したり、多くを語らないけどすごく考えてる。貫一のこういうところがいちいち刺さる…。そんで言い合いの最後の涙で完全にやられる。

本もいいけど、藤原季節が演じる貫一の魅力がすごい!

そよかの言葉が響く…

中卒回転寿司野郎こと貫一は、その後いろいろあって道路交通法で捕まり(あれは本当にダメ)、都は離れることに。そよかに延々と貫一の文句を言う日々が始まります。

貫一への未練を断ち切れていないことをそよかに指摘された都は、そよかみたいに立派な彼氏だったらこんなことにはならないと話します。

でもそよかはそよかで大変でした。彼氏は見た目は立派でも、バツイチで子供に慰謝料を毎月山のように払ってることを打ち明けます。

それでも、好きになってしまったから。考え方や趣味の一致で、この人しかいないと思ってしまったから。そよかはそれでも生きられるように自分が頑張ることにしたと。

「自分の幸せは自分でカスタマイズすることにしたんだ。」

覚悟を決めたそよかのこの一言は、だいぶ心に響きました…。本で言ってたかな、こういう言い方ではなかったと思います。

そよか役の小林涼子がとても好きです。大人スマートな感じと、可愛らしさと綺麗さが共存している…!憧れるなあ。この方のそよかも大好きでした!

ニャンって軽率な人なんかじゃなくて

長谷川慎が演じるベトナム人のニャンに対しては擁護したいなーというところです。

わたしは、これは文化の違いだと受け取ってます。

日本人と結婚したいのは、兄も日本人と結婚していて、日本でビジネス展開をしているから。自分と歳が離れすぎているのを勘案するのは、ベトナムでは親戚間の間柄が密で、兄のお嫁さんとのバランスを考える必要があるから。

言葉にすると計算高く感じるかもだけど、ゆくゆくは兄と同じように日本とベトナムを行き来して、ビジネス展開をしたいニャンからすると、こういう考え方でも無理ないのかな~と感じます。

なにより本だと、ニャンの溢れる愛嬌と色気でそんなことは気にならずすんなり受け取れた気がする。そして都がニャンに流れそうになるのも、ドラマだと出番が少ないので唐突で軽く見えるけど、ちゃんと布石があるので!本だとものすごい都にアタックしているので!

「割れ鍋に綴じ蓋」ああ、この表現だわ

ある出来事から貫一のことを思い返し、最後の最後、都が貫一の職場に訪れます。

「割れ鍋に会いに来た。」

お互い足りないところがあるけど、お互い補い合って生きていく。それを割れ鍋に綴じ蓋って言うんでしょ。とめずらしく都がうんちくを語ります。

これはドラマのみで出てきた表現で、本に出てきた「連帯して生きていく」という部分を再解釈したところだと思います。この表現にとてもしっくりきて、その後、都と貫一が等身大で話している様子で、二人独自の関係性がスッと胸に入ってきました。

最後、貫一の目のふちが赤くなってて、泣きそうなその顔がすっっごくよかった。藤原季節の貫一、魅力的でした。

ドラマは都の"恋愛"に焦点を当てている

今回の実写化ドラマは、都の恋愛に関する部分を切り取った物語だったと思います。この着地をするための1・2話。最後にいい着地を見ました。

都は松本穂香が演じたことでだいぶ中和されていたものの、他力本願なところがあって、相手を値踏みしたりするところが好きになれない人は多いと思います。でも共感する人はたくさんいるよ!たまたま好きになった人が仕事面・金銭面での心配があったら、「ああ、この人がもうちょっとしっかりしてくれたらわたしは…」って自分を棚に上げて思っちゃう。

ドラマを観たあと「え、30代でこんな考え方なのこわ…!」っていうレビューを見かけました。きっとその人は、合理的に物事を考えて、自分をもって人生を積み上げてきた人だと思う。素晴らしい。けど、そんなに素晴らしいと、こんな風にぐるぐるしちゃう人の気持ちは分からない。強くて羨ましいけど、なんだか寂しいな、と感じる自分がいたりもします。

賛否両論あるドラマだと思う。

このドラマは賛否両論あると思います。どちらかというと否定寄りの意見が多そうな感じすらします。長い小説を良い部分をかいつまんでダイジェスト版にしてあるから、恋愛の部分は結構鮮明に映し出しているものの、どうしても介護だったり、仕事だったり、その辺りはあっさりしてしまってました。そこに違和感をもった人は、本を読むとスッキリすると思います。

共感する部分があった人にももちろんおすすめで。都と貫一の話も、最後の方は結構展開が違くて、もっといろんなことを知れて得るものも多いです。

本を読んでから観たわたしとしては、1話2話ではどうしても間違い探し的に観ていて、厄介な視聴者になってしまったな…と反省しているところです。

ラストはドラマ独自のたたみ方で、いままでごちゃごちゃ言っててごめんと思ったな…。ここに着地するための1話2話なんだから、いろいろ言うべきではなかったな。ドラマの都と貫一が、ぐるぐる回った先の着地が見れてよかったです。

世間の評価がダメ女とダメ男だったとしても。足りない部分を否定し合うんじゃなくて、相手ばかりに求めるんじゃなくて、補い合ってこんな風に「二人で一人前」になれればいいじゃないですか。わたしは二人を応援します!

最後に、都の母のセリフになってましたが、この言葉で締めます。長々と個人的レビューを読んでくださりありがとうございました!

幸せになろうとすると、少しのことが許せなくなる。幸せって自分でいえるなら、それでいいじゃない。

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