BOOKS:LIMELIGHT

読んだ本を、感想とともに紹介していきます。

自己表現を試す場として、心して書くべし。ー2023年のわたしより

2023年が終わる。わたしは来年のわたしに言いたい。

心して書くべし と。

今年は5月に読書ブログを開設してから、とにかく書きまくった。今日で131記事目で、2日に1回以上は何らかの記事をアップしていたことになる。

記事をアップしていない時も書きたいことの整理や下書きをしているので、もう書くことを考えない日はなかった。憑りつかれたようだった。

書くってのは、その対象について深く深く考えることだ。興味があるものを書く時、すごく楽しい。いつまでもこの時間が続けばいいなと思う。でも、悩みについて書く時っていうのは、どこまでも深く深く落ち込んでしまう。やみくもに本を読んで正解を探したところで、その場しのぎの安心感で、正解なんてないと虚しい気持ちになったりすることも多い。

もちろん、意味がないなんてことはない…のかもしれないけど、わたしは悩みに対してむやみやたらに調べたあげく途方に暮れるスタイルの悩み方には飽きた。そういうのに時間を使うより、自分が素敵だな、美しいな、と思うものに使っていきたい。

きれいごとだとは思う。どうしても考えちゃうとは思う。だけど、せめて心持ちだけはそういう考えで生きていこうよと来年の自分に言いたい。

キーパーソンは「遠藤周作

心して書くための、わたしにとってのキーパーソンがいる。作家の遠藤周作だ。

「沈黙」「海と毒薬」などシリアスな小説を書く人かと思ったらエッセイではざっくばらんに持論を展開しまくる。かと思えば、趣味では社交ダンス、俳画教室、それに自身でクラシックの音楽会や劇団公演を主催したりしている。

実に多面的な生き方で、この方の小説やエッセイを読んでいると、なんだか自分の考えていた世界がはなっから覆りそうな気がしてくる。

「あなたは何に生きてみたいか?」

エッセイ「自分をどう愛するか」では、誰しもが幸せになりたいと願うのに、どうしてそれは叶わないのか。独特な切り口で語っていく。わたしは別にすごく幸せになりたいというわけでもなくて、挿絵の楽しさで選んだだけだった。その時の気になる章だけ日々読んでいる。

その中で「あなたは何に生きてみたいか」という章がある。何に生きる…何に価値を見出して生きていくか。深い問いに、すぐには答えが出ない。

この章で取り上げているのは、著者が主催している素人だけを集めた劇団の公演の様子だ。普段はサラリーマン、OL、主婦、いろんな仕事に従事しているアマチュアたちを集めて、1年かけて稽古して、本番の公演に臨んでいく。

日々の生活の中で、突然やり始めた劇団活動が持つ意味は、とても大きいものだった。

「生活の中に人生を!」

劇団・樹座(きざ)では「生活の中に人生を!」を掲げている。

生活の中で人生を見出すのではない。生活と人生は全くの別物としてとらえている。家庭や仕事は生活であって、劇団で活動している間があなたの本来の人生だということを伝えている。

やりたいことがあるからって、別に今の場所を離れなくていい。今の生活を保ちながら、新しいことを始めてみればいい。やりたいことが出来ないと、同じところでぐるぐる考えがちな自分の悩みが薄らいでいく。

劇団員は稽古を重ね、舞台に立ち、他人を演じることで自分の心の中を解き放つ。失敗なんてつきもので、むしろうまくやった時より評価されるのがこの劇団の良いところだ。成果ではなく、やってみたことを評価していくのがすごくいい。

みんな、この劇団に入って公演をすると自己表現をすることに病みつきになっていく。この劇団の心持ちで、劇団員のような気分でわたしは物を書いてみたい。

祭に向けた遊びとして

劇団員は一年間活動し、その後は各々の生活に帰っていく。そして劇団は新しい一般人を集い活動を続けていく。年に一度のお祭と同じ気分でやる充実した遊びということだ。

人間というのは、人生の中で一年に一度お祭をこしらえる必要があるんです。文化人類学の学者たちもいってるけど、生活の中にお祭をこしらえることが、人生というものなんです。(中略)芝居だって、コーラスだってなんでもいい。要は、精神を緊張させ、あなたの人生を充実する時をもつことが必要なんです。

遠藤周作著「自分をどう愛するか」より引用

岡本太郎も、芸術と青春 (光文社知恵の森文庫)の中で祭の重要性を話していた。「ハレ」と「ケ」を、「祭」と「祭の準備」ととらえるところはすごく好きだった。祭要素も大切にしていきたい。どうやってつなげよう。一年かけてやってみようか。

「何を書いていきたいか」ここを軸に、書いていく。

もう樹座はないけれど、イマジナリー樹座の劇団員になった気分で、わたしの別な一面づくりに精を出したいところだ。書いている時だけは、生活と切り離した別の自分で書くとかね。要するに、このブログは自己表現を試す場所だ。そこで、冒頭の「心して書くべし」に戻っていく。

いろんな作品を自分目線で切り取って、独自に展開して遊ぶように書くというのがわたしのスタイルになりつつある。切り取る部分には良くも悪くも自分がすごく出る。

なので、何を書いていきたいか。ここを自分の軸に置いて進めていきたい。反省することも多いだろうけど、やってみることが大事だから。

人間はみんなが、美しくて強い存在だとは限らないよ。生まれつき臆病な人もいる。弱い性格のものもいる。メソメソした心の持主もいる……けれどもね、そんな弱い、臆病な男が自分の弱さを背負いながら、一生懸命美しく生きようとするのは立派だよ。

遠藤周作著「おバカさん」より引用

わたしも本当にそう思う。自分の弱いところを自覚して背負いながら、自分が思っている美しい生き方をしていくことこそ、やってみたいことだ。

そのためには、いつまでもメソメソやってる場合じゃない。いいものをどんどん見て、読んで、味わっていこう。そして心して書く。書いたらより「見える」ようになるから、そしたらきっとおのずと新たな一面ができるだろう。

とりとめもなかったけど、来年はこんな感じでやっていく。もうちょっと軽く考えられたらいいのだけど。それは課題ということで…来年も引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。