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読んだ本を、感想とともに紹介していきます。

ないものねだり(中谷美紀著、幻冬舎文庫)読書レビュー

ないものねだりは、女優・中谷美紀が28歳くらいの時にアンアンに連載していた短編エッセイです。全部で70話も入っています。1話につき約3ページで、演じる日々や私生活のこと、旅行の話など幅広く楽しめます。

ないものねだり (幻冬舎文庫)

どんなに格好悪くても、健康管理のための「赤い腹巻き」と朝晩二回の「鼻うがい」を欠かさない。そんな女優も、撮影現場では子供に「おばさん」呼ばわりされ、ファンに愛の証とばかり、牛に「ナカタニミキ」の名をつけられる始末……。刑事に詐欺師、娼婦にエルメス、とさまざまな人生に身を任す女優の台本のない日常を綴った赤裸々エッセイ集。

中谷美紀著「ないものねだり(幻冬舎文庫)」裏表紙の紹介文より引用

職場で愚痴をこぼしてしまい罪悪感を抱えながら書店をうろうろしていたとき、目に入りました。芯の強さとしなやかさを兼ね備えた中谷美紀から何かを得たい…!と購入。1日の終わりに話を聞かせてもらうイメージで読んでいました。

感想は一言で言うと「経験している量が違う!!」。著者の素敵なお姿は元々の能力ももちろんあると思うのですが、あの境地にまで達したのは個々の作品に対して誠実に取り組まれてきたことも大きいと感じました。

例えば「寝ても覚めても」では、ホテルビーナスという作品に出演するため準備期間として韓国語漬けの生活を3ヶ月続ける。まずは韓国映画を見て、週の大半は語学学校で過ごす。大体読めるようになったら今度は本場ソウルに行って武者修行。演じるためにできる限りのことをしようと行動する姿が素晴らしいです。

「棒読み三味線、特訓中!」では、映画:力道山の撮影に備えて三味線を習い、気持ちのこもった演奏をするべく練習を重ねる。そのうえ役柄に合わせて体重調整のリクエストにもこたえる。「関西弁の呪縛」では映画:疾走に向けて関西弁に挑戦。アクセントやイントネーションを台本に書き込み、先生が読み上げたものを録音してテープで自宅で聞いたり。同じところを繰り返すと感情を使い果たして本番でうまくいかないと、あえて台本にはないシーンを原作から探して練習したり。

「淑女の基本」では映画:電車男エルメス役に近づくため紳士淑女を養成する学校に通い、正しい姿勢を学ぶため本を頭の上にのせて授業を受ける。(ちなみに、電車男の元になった2ちゃんねるのスレッドを、著者は役をやる前からリアタイで見ていたらしいです。本物の中谷美紀が“エルメス中谷美紀に似ているらしい”っていうのを読んでいたかと思うとテンション上がりました!)

さらにプライベートでは女性らしさを得るために茶道、日本舞踊のけいこを重ねる。食事にも気をつけて美しい体をキープする。

こんなに経験しまくっているのに本人はどこまでも謙虚で、飾らずざっくばらんに話してくれます。圧倒的なインプットとアウトプットを繰り返す姿をみて、どうやら私は落ち込む前にやるべきことがたくさんあるみたいだ…と思い直しました。

女優の生態(スケジュール感だったり、現場の様子だったり)を結構突っ込んだところまで話してくれるのも面白みの一つです。

この本は、そろそろ素敵な大人の女性になりたいな…と願う人に役立つ本だと思います。一匙でも真似して、素敵な大人になりたい!