世間的な幸せと、自分自身の幸せって、全然違うのになんでいつもごっちゃになっちゃうんだろう?
こんな堂々巡りの悩みのループにはまりそうな時、繰り返し読んでいるのがこの「恋愛嫌い」です。
2007年に小説すばるで連載されていたこの作品は、時事ネタも多いので正直だいぶ古い小説だとは思います。でも根本的な考え方というか、悩みの質としては変わっていないと思うんですよね〜。
人と付き合った経験がないわけじゃないけど…恋愛は苦手。そう思っている女性の、それぞれに感じた「違和感」に焦点を当てているのがこの作品の特徴です。
このまま流れにまかせた方がいいのかもしれない。でもそれを選べないのが私。登場人物たちは自嘲的にそういいますが、わたしにはそのポイントが、自分の大事に思う価値観なんだと思えてなりません。
「違和感」を流せない女たち
この本では、3人のままならない女性が登場します。
26歳、二宮翔子
やっぱり、他になんにも要らないわたしなんだなあ。
平 安寿子著「恋愛嫌い」より引用
通販のデータ処理会社勤務の翔子は、激務に追われながらも生き甲斐がある。
それは、1人暮らしの部屋で猫と過ごしながら、気ままにブログを書くこと。コメントのやり取りで趣味の話をすることが彼女の幸せだったのだが、「中の人」と現実世界でも会う事になり戸惑う。
29歳、田之倉喜世美
恋は苦手だ。でも、だからって冷たい人間だなんて誰にも言わせない。
平 安寿子著「恋愛嫌い」より引用
コンタクトレンズ店に勤務している喜世美は、恋愛にのめり込めないのがコンプレックス。どこかでいつも冷静に状況をみていて、引き際を感じると身を引いてしまう。
ある日、店に飛び込みでやってきた元同級生は、ある意味一番会いたくない人で、心が波打つなか飲みに行くことにする。
35歳、八代鈴枝
結婚せずにずーっと働いていると、仕事に生きる女だと思われる。平 安寿子著「恋愛嫌い」より引用
食品メーカー勤務の鈴江は、販売促進部で忙しく働く美人OL。勤続12年目の彼女はある日、昇進の打診をされる。結婚しないなら、仕事に生きなきゃいけないの?いつも何かに前向きでいないといけないの?内心腹立たしい思いを抱えながら、癒しを求めてBARに通う。
彼女たちは別々の会社に勤めており、同じビルの食堂エリアでたまに一緒にご飯を食べる仲です。つかず離れず、程よい距離感で日々の起こったことや悩んでいることを話したり、話さなかったりしています。
「違和感」は「価値観」
3人とも、別に恋愛が嫌いなわけではありません。そしてそれぞれ欠点はあれど、決定的にどこかダメなわけでも、モテない訳でもない。ただ自分と周りとの間に生じる「違和感」を流すことが出来ない、不器用さをもっているのが共通点です。
自分の心の声を大切にする彼女たちは、はたからみればうまく生きれない残念な人たちなのかもしれない。でもわたしは彼女たちの生き方を見ていると、この流せないポイントってすごく大事だな。と思い出せます。この「違和感」は、大切にするべき「価値観」で、誰が何と言おうと、本人がダメならダメなんだってことを思い出せます。
人生の節目って、意外と迷わない
手痛い失恋をするというよりは、あ、違う。とすっと身をかわす、通り過ぎるような恋愛が多い3人ですが、意外な結末が待っています。
人生の節目ってある日突然訪れて、しかもそういう時は案外迷わないものです。
悩むときって、どっちでもよかったり、もう自分の中にある違和感に気がついているサインなのかもしれません。
迷いがちな人生のターニングポイントに開く本
「自分の幸せってなんなんだろう?」
20〜30代にかけて、わたしはずいぶんこのことについて悩んできました。だいぶ見えてきた部分もありますが、年齢を重ねてもきっと悩むことがあると思います。
いまって幸せのバリエーションが本当にたくさんあって、この本が出た2009年より自分なりの幸せの形が見つけにくくなっていると思います。
あの幸せもいいな、でもこっちの幸せも捨てがたい…とやっていると、いつの間にか何年も、何十年も時間が経ってしまいます。見つけたときにはもう手にすることが出来ないなんて悲しいことにならないように(わたしは既にあるなあ…)、要所要所で感じる「違和感」を見逃さず、自分なりの答えを出して行きたいものです。
たくさんある情報に混乱しがちな、わたしのような人に。こんな不器用に、自分に正直に生きちゃってる人もいるよ。遠回りにはなるけど、でも長い目で見たら悪くなさそうだよ。という気持ちを込めて、おすすめしたいです。
このパッケージだけ謎なんだよなあ…?こんなかわいらしい感じではなく、しっかり大人の女性の話です。大人になりきれない、大人の女性の話、です。