BOOKS:LIMELIGHT

読んだ本を、感想とともに紹介していきます。

何を「許す」かで変わる世界(ミッドナイト・ゴスペル4話レビュー)

今日も引き続きNetflixアニメ「ミッドナイト・ゴスペル」の話をしていく。この作品は、「生きることへの捉え方を、さまざまな人物がそれぞれ深めた世界から、独自の言葉で脳に直接語りかけてくる」ようなアニメという感じ。

理解できないものも多いが、直感的に「この作品はわたしに必要なものだ!」と感じたのだった。前回はとりあえず1周した感想と、これからどうやって深めればいいのか…?という作戦会議のような記事を書いた。

今回は一番心惹かれた4話「自らの終わりに惑わされ」のレビューとともに、これから深める作品や世界の検討をしていく。

物語としてのあらすじ

間違って別の星にたどり着いた主人公のクランシーは、トゥルーディ・グッドマンという女性に出会う。トゥルーディは殺された恋人のために戦う女戦士で、敵のもとに向かう道中にクランシーが同行しながらインタビューしていく。

「2人で1本のバラ」。トゥルーディは動く。

ゲストは心理学者、マインドフルネス瞑想指導者

ミッドナイト・ゴスペルは入り組んだ構造をしている。現実世界のポッドキャスト番組「ダンカン・トラッセル・ファミリー・アワー」がベースとなっていて、番組内でのインタビューにアニメーションがくっついている仕組みだ。

各話にゲストスピーカーがいて、主人公のクランシー・ギルロイ(こと、ダンカン・トラッセル)がインタビューしていく内容になっている。4話ゲストのトゥルーディ・グッドマンは心理学者。マインドフルネス瞑想指導者でもあり、心理療法への応用分野の先駆者でもあるらしい。

わたしはこの人の「瞑想」「傾聴」「許し」の話に対して思うところがあった(そのほか、孤独についても語られているが今回は割愛する)。それぞれ話していく。

【瞑想】書く瞑想に興味が湧く

瞑想というとどこか身構えてしまうところがあった。しかし、途中に出てきた「書く瞑想」というのは初めて聞いたことで、書いたものをお互いに話すという流れには興味が湧いた。

書くことで今を知り、共有することで得られる気づきがある。

作品では話すことで手を差し伸べてくれる例もあるという紹介の仕方だったけど、文章の中でどこに思考のバイアスがかかっているのかを他人に聞ける、とてもいい機会だと感じた。

【傾聴】終わりを意識することが傾聴への近道

道中、クランシーが昔話をする。友人と会った際、誰も興味がなさそうな話に長々と付きあわせてしまった。だが実は、それが友人に会える最後のタイミングだった。

そのうえで、人の話に耳を傾けるために、何か意識できることはないか?と問う。それに対してトゥルーディが言った言葉が印象的だ。

「いつかは分からないけれど死は確実に訪れる
それが分かっていたら 自分が他人の時間を無駄にしたという後悔も減るはず」
ミッドナイト・ゴスペルより引用

あなたにもわたしにも、終わりがある。そのことに敏感でいることで、傾聴の姿勢は自然とできるのだと話す。

自分にもクランシーに似た経験があり、あの時、何か言いたそうな友人の様子がずっと頭のどこかにある(実際、どうなのかは分からない。私の後悔が過去を歪めている可能性もある)。クランシーのように自分には人の話に耳を傾ける才能がないんじゃないかと思うのだけど、やれることがあると感じた。

分からない部分としては、「人の話を聞くには、少し瞑想が必要になる」というところ。人の話を聞いている時の自分の心の動きを探る…なかなかできそうにないけれど、後悔しないために、わたしは実践したい。

【許し】何を許すかで世界は変わる

この物語の要になっているのが「許し」だ。これもまた難しいんだよなあ…。

わたしは今まで、「許す」は「我慢」のように捉えていた。対象を仕方なく許容するイメージだ。

トゥルーディは「許しは厄介なもの」と話す。「許し」は怒りを感じた時の最善策だが、しかしだからと言って、全てを許容はできない。

時には恨みや悪意を感じる自分を「許し」、心を解放させることもあるだろうという。トゥルーディの決断は美しく、わたしはその生き様に強く惹かれるものがあった。しかし、決断が導く物語の結末は儚く切ないものだった。

その切なさ込みで4話が好きなのだけど、わたしは「何を許すかで世界は変わってしまう」のだと感じた。ここに善悪は、関与できない。もう人それぞれだろう。

より深く知るために「ルーミー」を読もうか

物語の中でトゥルーディが本を開き引用する場面がある。

「加わる喜びを感じよ」
「雑踏の中を歩いて雑踏になりなさい」
「情熱を飲み込み不名誉となれ」
「両眼を閉じもう一つの眼で見よ」
「助けが欲しければ手を広げよ」

とくに、雑踏と情熱に関する部分が好きだ。ルーミー、と言っていて、何かと思ったら「ジャラール・ウッディーン・ルーミー」という詩人の名前みたいだ。わたしはトゥルーディの精神性がどうにも好きになってしまったので、この本も読んでみたくなった。

定価一万円て!図書館にあるかなあ…

ルーミー 愛の詩

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こちらはまだ手に取りやすそうだ。でも多分、わたしが共鳴するのは「愛」の部分ではなさそうな気がする。

この境地まで行きたいなあ

最後のほうにトゥルーディとクランシーが交わす会話が本当に好きで。

"心を決めると世界はそのように動くものね"

"自分の目標が定まるのを世界が待っていたかのようだよね"

"何が大切かをね
自分にとって大切なものにエネルギーを集中させるの"

ミッドナイト・ゴスペルより引用

福音だ…!この言葉を聞くだけで、救済されるわたしの心がある。急ぎたくはないけど、早くこの境地に行きたい。

2人の会話は声のトーンが穏やかに調和していて、心地がいい。ずっと聞いていたくて、なんかわたしのいる世界はこんなのがいいなとじんわり思う。

瞑想も傾聴も許しも全然体得できそうにないけど…知ろうとすることだけはできるだろう。引き続き、探り探りで深めていこう。

(おまけ)書くたび読みたい本が課題のように増えていく…いまは展開の段階だからよしとしよう。そんななか、こないだ言ってたゲストの翻訳本の一冊「煙が目にしみる」が手に入ったので、今はそれを読んでいる。
興味深いという意味で、面白い!次回は少し間が空くと思うけど、またそのうち話す。