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読んだ本を、感想とともに紹介していきます。

【タイタンの妖女/用語考察】クロノ・シンクラスティック・インファンディブラム(時間曲率性漏斗)

今日はちょっと息抜きに、カート・ヴォネガット著「タイタンの妖女」の最頻出用語「クロノ・シンクラスティック・インファンディブラム(時間曲率性漏斗)」について、単語のおさらいと自分なりの考察を話してみます。

この小説は、物語の主要人物の一人、ウィンストン・ナイルズ・ラムファードが愛犬のカザックとこの「クロノ・シンクラスティック・インファンディブラム」に飛び込んでしまったことから始まった(判明した)話です。なのでこれのイメージがないとそもそも話がよく分からない。

わたしは今回、ノートにまとめたり、立ち止まって考えを巡らせる時間を多くとりました。単語の意味やそれが使われる背景などについて自分なりの解釈をつくってみたらぐんと世界に入り込めた感じがします。

今日は、作品内でおそらく最も頻繁に出てくるこの単語をおさらいしながら、わたしなりに考えたことを一例として話していきます。まあ辞書に意味が載っている訳でもないですし、わたしが勝手に解釈したことなので、こういうやつもいるんだな~くらいで読んでいただけたら幸いです。

序盤に、たとえ話の説明がある

この単語は作品の序盤に説明があります。文庫本でいうとP20~「いろいろなふしぎと、なにをすればよいかの子ども百科」第十四版からの引用部分です。

子供に語りかけるようなたとえ話口調で進んでいきますが、かいつまむとこんな感じです。

  1. 自分の世界が正しくて、そしてそれを証明できる真理があるとする
  2. 遠い遠いところに、1とは矛盾した別の正しさがあり、そして向こうもそれを真理として証明できる世界がある
  3. (このままだと交じり合ったときに問題が起こってしまうが)たくさんある真理が、ぶつかり合うことなく時計の部品のようにぴったり一つに収まるようなスポットがある
  4. それが、クロノ•シンクラスティック•インファンディブラム(時間曲率性漏斗)。

これを読むと、なるほどなって思います。

「時間」と「みかんの皮」と「ろうと」

でも、その後の直訳の説明でよくわからなくなるんですよね。

  • クロノ=時間
  • シンクラスティック
    =オレンジの皮のように、どの方向にも同じように曲がっていくこと(曲率)
  • インファンディブラム=ろうと、じょうご(水を容器に移し返すときに使う、アレ)

こう書いてあるけど、まあなんのこっちゃです。時間と、ミカンの皮と、ろうと?

そして世界にはこんな場所が沢山存在するとも言っています。

わたしが考えた「クロノ・シンクラスティック・インファンディブラム」

この3単語の意味合いを、わたしなりに図説するとこんな感じです。

雑だけど…伝わってほしい
  • 時間と次元は、座標(マス目)に見立てる。砂時計をイメージして、小さい粒はたくさんある瞬間的な時間を示す。
  • どの方向にも同じように曲がっているもの=たくさん存在する世界のそれぞれの真理、と解釈。わたしが連想したのは花で、ピンクッションの花のように先にくっついてる丸い部分を真理と考えました。
  • これをろうとでこして、最終的に出てきたものが、クロノシンクラスティックインファンディブラム。

単語が出てくるたびに何度も説明部分に戻ってイメージを育てて、最終的にこんな感じになっていきました。

要するに、沢山ある真理が一混ぜになっている場所…ブラックホールか、あるいはワームホール?的なものなんじゃないかと思っています。

自分なりに単語の意味を考えると、より楽しくなる物語!

カート・ヴォネガットの小説が読みにくい原因は、作品内の用語の分かりにくさだと思っています。なにそれ?と思うたくさんの単語をしつこいくらいに繰り返すので、めんどくさくなる人も絶対多いはず。

この現象は現実世界にもよくあるなぁと思います。専門用語が1~2個ならまだ前後の文脈で推測できるけど、10個も20個も複雑に絡み合うともう考えるのが面倒になって嫌になってしまう。

わたしが考えたクロノ・シンクラステイック・インファンディブラムは、既に読んだ人にとっても?かもしれません。

同じ文章を読んでも、受け取るものや連想するイメージが違うっていうのも小説を読む面白さなので、他の人はどう考えているのかも気になるところです。

こんな感じで物語に出てくる特有な単語について言語化したり、脳内に図説のようなイメージをつくると、より物語にのめり込めて楽しい!どんなイメージでもいいから、自分でなんとなく解釈してみるっていう読み方が、わたしのお気に入りです。

タイタンの妖女」は壮大な物語で、登場人物たちと一緒に何度も何度も入れ子式に振り回されます。真相に迫ると途端に虚しさと切なさが溢れて、読んでから一ヶ月経ってるのに、まだあの世界から自分の一部が戻ってきてません。

今日みたいに沢山ある用語や星の特性を少しずつ分解して話しながら、作品全体の自分の感想をまとめたいと思います。

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