BOOKS:LIMELIGHT

読んだ本を、感想とともに紹介していきます。

「架空OL日記」を読んでOLだった日々を思い返す

いつだったか、架空OL日記のドラマを観た。銀行員のOLとして働く架空の彼女たちは、わたしの前の会社の雰囲気にそっくりで驚いた。

前職は、やってる業務はちっとも楽しくないし、なんの役に立ってるかもわからなかったけど、その割に給料がよかった。ほぼ女性だけだったので女子校っぽい感じで人間関係も良かった。ただ、業務への虚無感と変わりばえのない日常になんとなくいつも気だるい雰囲気が漂っていたように思う。

ドラマ版は夏帆と臼田あさ美とバカリズムらとで、そんな気だるい雰囲気がよく再現されている。いつか小説も読んでみるか~と思っていたところ、見つけた。

架空OL日記 1 (小学館文庫)

会社のあとに、デパートの化粧品売り場をチェックしたり、しめにラーメン食べて焦ってジムに行くけど、お腹はぽっこりのまま。それが私。寝坊して遅刻しそうになり、髪はボサボサ、眉だけ描いた緊急メイク状態で電車に乗ったら高校時代のかっこいい先輩にばったり遭遇。なのに、まわりからはいつもと同じといわれてしまう。それが私。ジムで腹筋が割れてスタッフに間違われたりする同僚マキちゃん、いろんな意味で天然すぎる後輩サエちゃんたちとの半笑いな日々。

バカリズムが、OLになりきって書いた伝説のブログ、二冊同時の文庫化刊行です!

バカリズム著「架空OL日記(小学館文庫」裏表紙の紹介文より引用

「○月○日、今日は○○があった。」

ひたすらブログ日記風の記事が続く。横読みなのでさらにブログっぽい。読み始めて、なんかすごく馬鹿にされてる感じがしてちょっとむかついた。バカリズムの「OLって、こういうこと考えてて、こんなこと言っちゃう感じっすよね〜」っていうのか透けてみえる(被害妄想)。でも興味持っちゃったし買っちゃったし。まぁもう仕方ないから読もうと思って読み進める。

印象に残ったのは…と話したくて本を見返したんだけど、いつもならたくさんブックマークしているであろう文庫本になんの印もついていない。それがかつての日常を思い起こさせる。何か起きているようでなんにもないような日々。あ、でもハロゲンヒーターの話はドラマで観ていて、文章も空気感も込みで忠実に再現されていたことを確認した。話が進むにつれ、あ〜これだわ、わたしの日々もこんなだったわ、と考えをあらため始めた。負けを認めた感じである。

わたしが思うに、著者は身内か彼女がこういう仕事をしていて、日々の出来事やぐちをうん、うんと聞いていたんじゃないかな。じゃないとこのエピソードのあるある感、気だるさの表現はできないと思う。あそれか飲み屋で働いてて愚痴をラジオみたいに聞き続けてたとか。とにかく、生の声をたくさん聴いてないとこんなに再現できない。

でも架空ってつけるくらいだからどこかで変なエッセンスを…ってへんなギャグとか、絶対OLは知らないだろ!っていうプロレスの知識とかを入れてくる。もしかしたらそんな深く考えず、本当に妄想で書き続けてたのかも知れない。とにかく本になるくらい書き続けたところに狂気を覚えつつすごみを感じる。

今のわたしの職場は自己満足ではあるけど面白い。給料は下がったけど、ついつい夢中でやっちゃう。でもたまに、昔の安全安心な、ものたりない世界を思い出す。そんな時、懐かしむようにこれを読んだりドラマを観たりしたいかも。そんな本だった。