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読んだ本を、感想とともに紹介していきます。

「デザインの現場」に目覚めた素人の感想ー25年前の雑誌を読む

1月にZINEぽいものを作ってから、編集する楽しさに目覚めた。職場で少しやってはいるものの、素人の域を超えるには相当な時間がかかるだろう。

参考になればと買ってみた「デザインの現場」という古い雑誌が、とても参考になるし面白い。職場に持ち込んだりして繰り返し読んでいる。

1984年創刊、2010年3月廃刊。当時の時代感が知れる貴重な資料でもある。

今日は、デザインの現場「文字を組む」特集の内容紹介、特に心に残っている部分、戒めとして覚えておきたいことを書いていく。あくまでデザイン素人の覚え書きだということをお忘れなく。こういう世界もあるんだな〜という軽い気持ちで読んでいただけるとありがたい。

初心者が話していいのかなと思ったりもしたけど、みんなはじめは初心者だ。ここからたくさん知っていけばいいんだと思って話していく。間違っている部分があったら、知りたいので教えてもらえたら嬉しいです。

文字を組む。とはどういうことか

文字組みというのは、かなりざっくりいうと読みやすくするための気配りのこと。文章がより読みやすく、理解しやすくなるように組んでいくのが基本。
上下左右(出版業界では天・地・ノド・小口という)の余白をどうするか、フォントはどれ?大きさはどうする?など本当にたくさんの気にするところがある。
加えて、その文章らしさを表現するということでもある。力強く訴えかけたい文章ならフォントはゴシック体だろうし、上品にまとめたかったら明朝体、みたいな感じでらしさを演出していく。
ただ、力強い明朝だってあるし、品の良いゴシックもある。この辺は判断が難しい。

ー厳密なルールは…ない!

最大の悩みであり面白みでもあるのが、明確なルールはないということ。もちろん、これはやっちゃダメだよねーという最低限の約束事はある(割とたくさんあるみたい)。けど、そこから先は制作者が制作対象をどのように理解して、どのような文字組みがふさわしいかを考えてつくるということになる。

この雑誌ではBRUTUS、GINZA、流行通信などの雑誌と、書籍の制作現場に取材している。現場のスタッフから制作環境、ルール決めの話、ちょっとした裏話なども挟みながら紹介している。あくまで当時のだけど、実際に使っているフォントや文字詰め、行間指定なども載っていたのが嬉しかった!

フォントで気になったのが石井フォント。写研の創業者が作ったもので、どうも見慣れた感じがする…と思ったら雑誌によく使われているフォントみたい。今年復刻するみたいなので、チェックしておこう。

www.morisawa.co.jp

時代感は今と通じるものがある

この雑誌は1999年発行。25年前…!雑誌の良さは時代感がわかること。わたしが毎日使ってるDTPソフトのInDesignインデザインは、まさにこの年に生まれたらしい。そしてこの謎の機械がイラレとかフォトショ…?らしい。

どうやって使うんだろう??

中盤には「DTP組版と電算写植系組版の今後」と題してインタビューがある。電算写植からデザインソフトへ移り変わっていく今後を危惧するとともに、過渡期に持っておきたい心構えについて書いてあった。

これからはDTPソフトを使って誰でも気軽に印刷物が作れるようになってしまう。便利になった結果、プロが介入せずレベルの低い組版が出回る時代になるからこそ、基礎をしっかり押さえたデザイン・文字組みが必要になってくるということ。

組版には感性が必要

DTPソフトについて、「感性がない人でも一応使えるような道具」と切り込んだ場面は痛烈だった。デザインソフト以外でも、Word・ExcelPowerPointだって、なんとなく使えちゃうけど、中身全然知らないな…。しかし、なんにしても「何が整っていて、何が崩れているのか」ということがわかればまだよい。知識とともに、美的センスがあることも重要。

ー自由には知識や理性が不可欠

DTPソフトはどんなことでも自由にできてしまう。例えば読める文字として今だと「6級=2.1㎜」が最小とされているけど、もっと小さい文字にもできてしまう。行間もあり得ないくらい近くできてしまう。使う人が正しい知識と目をもって、理性的に使用することが大切。

ーこのインタビューを戒めに

2024年の今、AIが浸透してデザイン業界を含めたほぼすべての業界が変わろうとしている。世界が変わる今、やっぱり大事なのは「根っこ」をきちんと知って、その上で自分で考えてつくることなんじゃないだろうか。

今までのことは一生探究するつもりで、これからのことはしっかり自分の目で見て。見定めて進むことが大切なんじゃないかと感じた。この考え方は戒めとしてもっておきたい。

古書店に行く用事ができた

学がないので知らなかったけど、文献にあたるとはこういうことなのかな。もっともっと文字組み、出版業界、デザイン業界の歴史が知りたくて仕方がない。
生きるうえで無視できなくなりつつある変化の時代に、必要以上に動揺しないように心づもりを作っておきたいのかもしれない。

神保町の古書街に行くと、雑誌類は昔のものでも割と綺麗なものがあったりする。「デザインの現場」はとても読みやすくて説明もわかりやすいし、そんなことまで?っていうことまで教えてくれる。

本を買い漁るペースを落として、わたしは古書店を巡ってこの雑誌のバックナンバーを集めることにする。

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