1月末までギンザグラフィックギャラリー(ggg)でやっていた「Daijiro Ohara HAND BOOK」展に行ってきた。
デザイナーの大原大次郎をちゃんと認識したのはこの展覧会だった(不勉強)。でもつくっているものはたくさん知っていた。
入って早々に浴びたのは、見渡す限りの制作メモ、メモ、メモ!
サケロックとか、星野源とか、好きで集めていたジャケットの制作過程が見れたのが嬉しかった!電気グルーヴ、鎮座ドープネスなどもあったし、とらやのビジュアルもやってて驚いた。
わたしは初めてのZINE制作で煮詰まっているところだったのだけど、見終わった後は一本道がまっすぐ伸びているような、爽やかな気持ちになって帰った。何度でも思い出したくて、書き残していく。
<手遊び、手探り>
それが展覧会のキーワードだった。
何かをやってみる時に「手順」を考えるんじゃなくて、遊ぶように手を動かして、手で探っていくのがこの人のスタイルということだと受け取った。
見るなかで、このやり方がこの人にとって「生活」レベルに溶け込んでいるのがわかった。ご飯を食べたり、お風呂を食べたりするのと同じ感覚でごく自然にこのやり方になったんですっていう感じがする。
伸びやか、軽やか、なんか爽やか
線の感じとか、絵の雰囲気とか、みていて気持ちが良い。1/fゆらぎみたいな、説明しきれない心地良さ。びっしり描いてあったりするのに重くない。こんなにたっくさん描いてあるのに、軽やかなのがいいなぁ。
たくさんの紙を眺めると、表現する回路にねじれたところが見当たらない。それかねじれてたとしてもするりと乗りこなす回路があるような…なんか一貫としたまっすぐさとしなやかさを感じた。
もしくは、ねじれたところは見せない、という人なのかも。だとしたら、それもまたかっこいいな。
何かになる前の高揚感が紙に残ってる
見ているだけなのに気持ちが高まってきて、わくわくするのが止まらなかった。それは、「え、これよくない?」「こういうのもよくない?」みたいなつくる過程でテンションが上がる感じが紙に残っていたからだと思う。
何かになる前の過程の部分を残しておくのって、意外と大事かもしれない。その時の状況とかも思い出して、つくった本人が一番胸にくるだろうな。
自分と照らし合わせて見えてきたもの
わたしが見に行ったのは、自分がつくるものにどうも納得がいかない…というタイミングだった。すごく不満なわけじゃないけど、なんか違うんだよな〜。くらいのモヤモヤした感覚。
たくさんの<手遊び・手探り>を見ながら思いはじめる。
わたしにとっての遊びが、いつも苦行になってしまうのはなぜだろうなぁ。
夢中になるあまりいつの間にか「修行」に置き換わり、休みは「療養」のようになるのがお決まりのパターン。力の入れ方、抜き方がいい大人になっても分からない。
さらに<手遊び・手探り>を見ていくと、確信めいた気持ちが沸いてくる。
わたし、手が動いてないだけ、だ!頭でぐるぐると考えまくってるだけ、手が動いてないだけ!途方に暮れる前に、まだまだやれることはたくさんあるな、と。もちろんそれだけではない。だけど、一番大事なとっかかりはきっとそこだ。
頭で考えはじめたとき、それは遊びじゃなくなっちゃうんだ。…これ、大事なことだ、わたしにとって。この気持ちは忘れたくない。「煮詰まったら、手を動かしてね」では思い出せないので、「煮詰まったら、この記事を読んでね」と手帳にメモした。
買ったもの
展覧会をきっかけに買ったもの。本とコピー用紙。
本は会場では完売してしまって手に入らなかったけど、アマゾンでは売っていると聞いてすぐさま買った。買った時点でベストセラーマークがついていて、そりゃあの展覧会行ったらすぐほしくなるよねと納得した。
高価なだけあり、すごい密度の創作物だ!大量の創作メモは会場だけだったけど、その代わり会場にはなかった文章が入ってて嬉しい!
わたしが行った時はご本人が在廊していて、サインコーナーが始まっていた。遠目でみて驚いたのは、定規でサインを書いていたこと!遊びつくした到達点のような気がした。わたしも安直に買ったコピー用紙で、安直に遊びはじめよう。
あー、本をじっくり読んでから、もう一回観に行きたい(終わってる)。こんな「つくる醍醐味ぜんぶのせ」みたいなのを、惜しみなく、しかも無料で!見せてくださりありがとうございました。活かします。
わたしは物事を飲み込むのはものすごく時間がかかるけど、納得したあとの行動力と持続力には、ちょこっと自信があるんです。
展覧会情報
「Daijiro Ohara HAND BOOK」
会期:2023年12月11日(月)~01月31日(水)
会場:ギンザ・グラフィック・ギャラリー(ggg)