先日、運営している一箱本屋に知り合いが来てくれました。自分のところも含めていろんな本を買ってくださったのですが、その中に「木」という本がありました。
「映画に出てきてたのを思い出して」という一言を聞いて急に気になってしまい、まずは映画を観てみることにしました。今日はその記録です。
映画「PERFECT DAYS」
「PERFECT DAYS」は、役所広司演じる主人公が、自分が好きなものを自分なりに愛する様子を描いた作品。
ふとした瞬間に守られていることに気がつくように、対象を感じとる。そして目を細めて、ほっとしたような、ちょっと恥ずかしいような笑みを浮かべる。その姿を見ていると、忘れかけていた何かに灯りがともるような気持ちになります。
(わたしはアマプラで見ました)
彼が好きなもの
形があるものでいえば― 音楽、写真、本、植物。
音楽はカセットテープで。
写真はインスタントカメラで。
本は古本屋の100円コーナーで。
植物は、種がこぼれて生まれたての「実生」を救い上げる。
形がないものは、少ないながらも独特な人との関わりだとか、日々の移ろいの中で感じる空からのまなざしだとか。映画をみるなかで伝わってきます。
日々、自分を好きなもので満たしていく。背伸びしない範囲で生活に溶け込ませていく。決して贅沢じゃないのに何と贅沢なことか。
見終わった後は誰もが自分の「PERFECT DAYS」について考えてしまうんじゃないかなあ。思いを巡らせるうちに、逆に彼が大事にしていないもの―そぎ落としたものを考えはじめました。
彼がそぎ落としたもの
形があるものでいえば― 衣・食・住。
手入れはしてあるものの、年季が入った衣服。
メリハリというか…点状に集中している食。
風呂なしの安アパートは、どこで何をするかを考えてカスタムしている。
形がないものは、やっぱり「属性」ということになるのかな。属することから降りるのは、相当な勇気がいることだったろうし、降りた後も付きまとうものだと感じました。
もしかしたら能動的にそぎ落としたのではなく、淘汰されていっただけなのかもしれない。人柄的に、後者な気がします。
印象に残った言葉
「分からないことだらけだなあ 結局何も分からないまま 終わっちゃうんだなあ」
そうだねえ…と一緒に途方に暮れちゃいそうなもんだけど、主人公の返事は思ってもないものでした。
普段寡黙なのに、こういう時に言葉と行動が出てくるって素晴らしいな。どうでもいい時にべらべら喋って、ここぞという時に言葉が出ない自分を思い出して、羨ましくなってしまいました。
とはいえ、彼の姿は私の「PERFECT DAYS」とは少し違うな、とも。私はもう少し言葉のやり取りがほしいな。思っていることをその人の言葉で聞きたいし、自分も話したいなと思ったりするのでした。
読みたい本が増える
映画の中で、本がいくつか登場します。
- ウィリアム フォークナー「野生の棕櫚」
序盤、眠る前に読んでいた本。やろうと思えば今日からでもこんな風に過ごすことができるんですよね。
- 幸田文「木」
作中で一番印象的な本。このカバーを見ると、主人公が手に取ったのも納得です。
- パトリシア ハイスミス「11の物語」
姪っ子が興味をもった本。登場人物に対して、「これ、わたしだ!」と思うことってありますよね。大人になっても忘れない本になるだろうと思います。
どれも読みたくなってしまいます。音楽もよかったですね~、こういうところから興味がひろがるのが楽しいです。
本もいいけど、映画もいいね。
そういえば、ブログを始めてから映画はほとんど観ていませんでした。久々に見るといいものですね、また観たくなりました。
読書ブログだけど、たまにはこういう話をしてもいいかなあ。自分で作った、意味のない縛りを緩めようかな。そうしたら、好きなものがもっと集まるいい場所になりそうです。主人公の盆栽の部屋みたいな場所に、ここがなったらいいと思います。
今週のお題「最近捨てたもの」…読書ブログの縛りを捨てる
こだわりを削ぎ落して、好きで満たす。映画とか動画とか、物語を感じた瞬間だったら「あり」としてみます。しっくりこなかったら戻せばいいだけ、豊かな場所にしていきましょう。