BOOKS:LIMELIGHT

読んだ本を、感想とともに紹介していきます。

憎めないダメさが魅力の戯曲。モリエール「いやいやながら医者にされ」感想・レビュー

「いやいやながら医者にされ」を読んだ。先日の神田古本まつりのときに買ったもので、完全にタイトルに惹かれて手に取った。語呂がよくて、なんか口にしたくなる。

約400年前に劇作家として活躍していたモリエールの作品。諸説あるみたいだけど、力を込めて作ったル・ミザントロープ(人形嫌い)の興行成績が振るわず、抱き合わせで出す軽く楽しめるものとしてつくったものらしい。

主人公の憎めないダメさが癖になる。当時の医者に対する本音なども垣間見える作品で、映像を見ているような軽やかさで読んだ。

物語は、主人公で木こりのスガナレルと妻のマルチーヌによる夫婦喧嘩から始まる。圧倒的にスガナレルが悪いんだけど、マルチーヌもなかなかに煽りスキルが高くてどっちもどっち感が込み上げてくる(でも暴力はダメ絶対!)。
マルチーヌは積もり積もった恨みに似た感情をなんとかしたいと歩いていると、医者を探す使用人に出会う。そこで妙案を思いつき、使用人たちに名医として夫の居場所を伝える。
そこから当主の娘の病気を治すためにあれこれ試していく、というような流れ。

マルチーヌの「そこにいる男は名医なんだけど、変わった人間で棒でぶっ叩かないと白状しない」というとんでもない話を信じるほうも驚きだけど、どの医者に見せてもダメだったから藁をも縋る思いってやつだったんだろうな。

スガナレルも叩かれちゃうもんだから医者ってことにして、割とノリノリででたらめやっていくのが楽しい。

大したもんですな、偉い人っていうのものは、すべてどこかで気まぐれなところがあって、学問のなかにちょっぴり気違い水がまじってる。(p21)
モリエール「いやいやながら医者にされ」より引用

自分とは違う次元の人だ、と思うだけで多少の訳わかんなさはカバーできちゃうもんな。

それにしても好みの女の人を見つけて執拗に診察しようとしたり、適当に思いついた方法を勧めてみたり、全くどうにかしちゃってるんだけどなんか憎めないやつだった。

やっぱりどうも戯曲が面白い!人は人間のダメな部分に愛しさを感じるようにできてるのかな?人間味のあるやりとりを見ていると、種火がともるような元気がもらえる。

(おまけ)モリエール作品をもっと読みたくなって、次に買ったのはドン・ジュアン。10月にまた入会したKindle unlimitedに「人間嫌い」もあったからそっちも読んでみたい…楽しみ!