BOOKS:LIMELIGHT

読んだ本を、感想とともに紹介していきます。

読書で磨けるエンパシー(ブレイディみかこ氏インタビューを読んで)

愛用しているほぼ日手帳に、シンパシーとエンパシーについて書かれているページがありました。

2023年デイフリーの117ページ目に載っています。すごくわかりやすい。

継母にいじめられるシンデレラはかわいそうと感じるのは「シンパシー」。

継母はどうしてあそこまで冷たく当たったんだろうと考えるのが「エンパシー」という能力。

「自分の好きなことを人にしろ」はシンパシーで

「自分の好きなことは相手は嫌かもしれない」と思えるのがエンパシー。

演劇はエンパシーのための教育だと言ってます。他人になるのは、まさにエンパシーだから。

ーー鴻上尚史さんが『うじうじするくらいなら、今できることをやる。』の中で

ほぼ日手帳2023 デイフリー版より

先日のブログから読み方について考えを巡らせていたので、これは本の読み方にも共通しているな…!といろいろ調べてみました。

シンパシーとエンパシーはニュアンスが違う

[補説]シンパシー(sympathy)は他人と感情を共有することをいい、エンパシーは、他人と自分を同一視することなく、他人の心情をくむことをさす。

エンパシー(empathy)とは? 意味・使い方をわかりやすく解説 - goo国語辞書

ほぼ日の文章でだいたい分かったけど、一応辞書で調べました。シンパシーもエンパシーも直訳すると「共感・同情」と同じ意味です。シンパシーの反対語は「アンチパシー(反感、気に入らない)」。エンパシーは類語で似て非なるもの、といった印象です。

シンパシーは他人の感情に溶け合うようにして感情移入することを示し、エンパシーは別の存在として扱いながら、気持ちを汲み取ることだと理解できます。このエンパシーが、すごく読書に生きる部分だな、と思いました。

ブレイディみかこさんのインタビューを読んだ

エンパシーを掘り下げて調べていたら、作家のブレイディみかこさんのインタビューに行きつきました。分かりやすく、今の自分に響きました。まとめつつ、紹介します。

ポイントは共感できなくても、相手の目線で物を見ていること

イギリスでライターと保育士を兼業でやっていて、人種や考え方の違いはいつもとなり同士にあった。「多様性の時代の鍵は、共感できない人を理解するエンパシーにある」ということをたっぷりと語っています。印象に残った部分は、2つ。

読書でエンパシーを磨ける

小説などは、主人公の視点でいろんなことを体験できる。

主人公は共鳴できる場合もあるが、もちろんできないタイプもいる。たとえ共鳴できなかったとしても、「どうしてこの人はこの行動をとったのだろう?」と考えることに意味がある

たとえやっぱりわからない、という結論だったとしても、他人には他人の視点があって、自分とは違う人間がいるんだという事実は理解できている。(要約)

この言葉にだいぶ救われました。読書を通じて、登場人物のことを理解しようとしすぎて、しんどくなっていました(実際に具合悪くなったこともある)。たとえわからなくても、「そうか、そういう人もいるんだな。どうしてそうしたんだろう?」と考えを巡らせるだけでいいんだと思うと気持ちが軽くなります。

これは対人関係にいえることかもしれません。家族や親しい友人が自分には思いもしない価値観で生きていて、あまりに近すぎるがゆえに溶け合おうとして反発する。職場での行き違いにも共通する部分があると思います。読書を通じて疑似体験をすることで、たとえ共鳴できなくとも、考えることでエンパシーが磨かれるということです。

エンパシーにも種類がある

もう一つ勉強になったのは、エンパシーのなかにも大きく分けると2つの種類があることです。

  • エモーショナル(感情的)エンパシー
  • コグニティブ(認知的)エンパシ―

エモーショナルのほうはシンパシーに近くて、自分と同じ境遇や似た考えの人に抱く共鳴や同情がそれにあたる。コグニティブの方はさっき言っていたエンパシーの考え方に近く、相手がどんな人でも、その人の視点に立って世界を見ること。その人になりきって、想像して、ものをみること。想像を働かせる相手に制限がないのが特徴。

どちらも実生活で大切な視点であることは確かです。読書はもちろん、映画などでもエンパシーの視点は磨けるので、日頃からいろんな立場、境遇の人を見るためにも大切なことなんだと感じました。

著書「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」でも触れている

著書の「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」のなかで、エンパシーに関する記述があり、たった4ページほどだったにもかかわらず読者からの反響が大きかった、とも話していました。なんとなくタイトルの感じで敬遠していたけど、読んでみたくなりました。

読んで落ち込んだり、むなしい気持ちを引きずることが多かったですが、エンパシーが磨かれている瞬間だったのかもしれません。感性を磨くためにも、これからも読んでいこうと前向きになれました。

それにしても、経験してきている人の言葉は重い。保育士や介護士などのケア関連に従事している方は、日常的に考える瞬間が多いんだなと感じます。「この人はこういう人だと決めつけない」を日頃から考えていることは、人として、とても尊い。そんな人になりたいです。

ブレイディみかこさんインタビュー

https://www.minnanokaigo.com/news/special/mikakobrady/

下の本「他社の靴を履く アナーキック・エンパシーのすすめ」の出版に際してのインタビューだったみたいですね。

先日一生懸命考えていた「俯瞰読み」は、エンパシーのことです、きっと。あー、やっとスッキリしました。最後までお読みいただきありがとうございました。

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